トップのハラスメント辞任
「NGだと聞いてはいたが、これしきのことで辞める時代が来ようとは」
2024年末から2025年にかけて、組織トップのハラスメントに関する辞任が、ひときわ目立った年でもあった。
代表的なものを挙げてみよう。
● 東京メトロ社長辞任(2025年10月)
内部通報で「不適切な言動」が指摘され、外部弁護士調査で事実認定。
2025年に入り、関連する組織運営見直しが継続的に報じられた。
● ホンダ副社長辞任(2024年12月公表/2025年にも波及)
懇親の場での不適切な言動がコンプライアンス違反とされ辞任。
現社長も報酬返上を行い、社内の統治改革に着手。
● JR西日本副社長パワハラ認定(2023年発生→2025年に報道)
大雪時の会議での言動がパワハラと認定。
2025年には、鉄道会社の労務管理の象徴的事例として再度取り上げられた。
● 福井県知事(2025年12月辞任)
複数の県職員に対し、セクハラにあたるテキストメッセージを送り辞任
当事者は皆「まさかこの程度で辞任になる時代になるとは」と感じていたことであろう。少し前までは、「多少の強い指導」や「多少の性的な行為や発言」は許容される風潮があった。しかし今は、内部通報窓口や独立性のある調査委員会があったり、SNSで事実が可視化されることなどもあり、 “見えなかったものが見える時代”に移行している。
決してトップの人々が急に乱暴になったり、わいせつになったりしたわけではない。ただ、これまで当たり前だった行動の一部が、時代の変化によって“問題化”するようになり、そして今年、その流れが一気に表面化したのである。
これらのハラスメント辞任が示しているのも、クマ被害やランサムウェアと同じ構造である。つまり、「予兆はあったのに、それを“現実の危機”として扱わないままやり過ごす」という、人間特有の認知の遅れである。
言い換えれば、「新しいルールが既に動き始めているのに、その重さを自分事として理解していなかった」のである。これらもまた、今年のクマ被害が示した認知ギャップとまったく同じ軌道を描いている。







