地上波では昨今のフジテレビや日テレ問題については触れたくないであろうし、その内容を統括したエンタメを制作するまでには時間がかかるであろう。それをいち早く配信でやったところに見るべきポイントがあると言える。
さらに特筆すべきは、性加害の被害者に完全に寄り添った内容であることだ。
井岡と平田は、それぞれ芸能事務所と週刊誌編集部に務めるやり手のシゴデキ女だが、ドラマの最初では、スキャンダルを抜く記者と、報道される側の事務所社長として対立している。しかしあるきっかけから共闘するようになる。
この2人が、それぞれ性被害にあった女性に対して、言葉の限りを尽くすのである。その内容は、あなたが悪いわけではない、悪いのは加害をした側であるという強いメッセージだ。
性被害の場合、告発した側が世間からひどいバッシングを受けることも、ドラマの中ではしっかりと描かれている。それでも、2人は、被害者の側に立つというスタンスを崩さない。
井岡が「解離症状」について話す場面もある。被害後に、自分が自分ではないように感じたり、被害が遠いことのように思えたりする心理状況について、それは被害者にとってむしろ普通のことであると伝えるのである。
柴咲コウと川口春奈という、人気俳優がこれを画面で語ることの啓蒙力を考えずにはいられない。
最終回のラストシーンで
視聴者に向けられた「メッセージ」
また、最終回のラストシーンは近年芸能プロダクションと、そのタレントを起用するテレビ局で次々と問題となった事例についての、映像制作者側からの一つのメッセージとも言える。その言葉はテレビ局や芸能プロダクションだけでなく、SNSで言葉の刃をいつでも人に突きつけることが可能な一般視聴者にも向けられている。
番組のキャッチコピーは「真実は秒で変わる」。伝え聞くことの何が本当で、何がそうではないのか。拡散力を誰もが持つ時代において、人類がこれを良い方向に生かすことができるのかが試されている。深く考えさせられるドラマである。







