日本のレースが世界一の称号を与えられたのは初めてだった。世界の中で、日本競馬の位置づけは年々高くなっている。
競馬場の数で比較しても、日本はJRAの競馬場が全国に10カ所、地方競馬(ホッカイドウ競馬や南関東公営競馬など)の競馬場も15カ所ある。
インドは日本の約8.7倍の広い国土に、9つの競馬場しかない。競馬に対する人々の熱気と投じられる資本の差は歴然としている。レースのレベル、騎手の技術も然しかりだ。
それでも浦河町の牧場関係者は、口をそろえて言う。
「インド人は即戦力」
血縁や地縁といった同胞を頼りに
遠い北海道の牧場へ出稼ぎに
乗り役として一人前になるには数年を要するという。しかし、馬は乗り役の成長を待ってはくれない。馬には今しかない。今、自分を走らせてくれる人間が必要なのだ。
「下手でもなんでも、乗せなしゃあない」
ある牧場主が調教施設BTCの中でそう言うのを、私は聞いた。自分が雇ったインド人の技術に満足はしていないが、馬を走らせるためには贅沢は言っていられないということだ。
ファテ・シン(編集部注/インド北西部ラジャスタン州の騎馬民族の末裔。2018年に乗り役として北海道へ来日)を雇うアクティファームの加藤祐嗣さん(58歳)は、「一番怖いのは馬が勝手に走りだしてケガをしてしまうことなので、そうならないように、とにかく誰かに乗っておいてほしいんです」。
乗り役、とはよく言ったものだ。
日本で競走馬に乗る外国人は、スター騎手だけではない。JRA所属のクリストフ・ルメール騎手(フランス)とミルコ・デムーロ騎手(イタリア)は、メディアにしばしば登場するが、彼らがレースで騎乗するのは2歳以上の馬だ。
競馬デビューを果たす前の若馬と馬産地で格闘する外国人の「乗り役」には、スポットライトが当たらない。……私は彼らHHH(編集部注/筆者の造語で、ヒンディー・ホッカイドウ・ホースマンの略。北海道の牧場で競馬産業に関わる、ヒンディー語を話す外国人労働者を指している)のことを深く知りたくなった。
浦河で働くインド人は、ラジャスタン州、中でも中西部の都市ジョードプル(人口約170万)とその周辺から来たホースマンが過半数を占める。







