「こないだベトナムのエージェントのところに行ってきたんです。びっくりしましたよ。前はハノイの小さなオフィスだったのにホーチミンに移って、サイゴン川のほとりの大きなビルの中。日本円で3400万円したって。『あなた、どれだけ悪いことしてるの?』って言っちゃいました」
ズーが3年しか大学に行っていないことを告知しなかった不誠実さに加えて、そのエージェントが、志願者から高額の仲介手数料を取っていたこともわかった(トンの場合、6500ドル・約85万円)。
牧場主の言動に
外国人労働者が苦しむことも
『HHH インド人、ジャパンの競馬をHelpします!』(河野 啓 集英社)拡大画像表示
マダムは彼とのエージェント契約を打ち切った。新しく契約した男性は、ハノイの大学で数学を教える教授だった。
「自分は教育者で、本業もある。ベトナムの若い人たちを金儲けの道具にはしない」と断言した。
実際、行動が迅速だった。志願者をすぐに集めてきて「リモート面接をしてください」と言う。前のエージェントはなかなか人を集められず、マダムをやきもきさせたそうだ。
「きっと彼に払うエージェント料が高額過ぎたんですよ。それで志願者が集まらなかったんだと思う。今度の人は本当に頼りになる」
マダムはこれまで14人のベトナム人を入国させ、日高の他の牧場にも紹介した。サム氏などプロのエージェントとは違って、毎月の管理手数料は取っていない。
そもそも「技人国」の在留資格は、入国する外国人の「自己管理」を前提とする。誰かが管理するものではないのだ。それでも紹介先の牧場からは、細々とした相談が入ってくる。
「買い物に行くのにうちの車を使わせるときは、500円ぐらい取ってもいいのかしら?」
「それはうちで言えることではありませんけど、うちは場長のヒョーに自由に使ってもらってますよ」
生産牧場の仲間を思ってエージェントになったマダムだが、「長時間労働をさせてもらっては困る」と言っても、「いや、何十年も働いている日本人だってそうだから」と聞き入れてもらえない。
また、紹介したベトナム人から、牧場主の言動に苦しんでいることを打ち明けられて、やるせなさを感じたこともある。
「自分の子どもが働く身になってごらんなさいよ、って私思うんです。人に働いてもらう環境を作るのが、牧場主の仕事でしょうに」







