スポーツ選手がスランプに陥るメカニズム

この現象は、スポーツ選手のスランプにも似ています。まだ実績のない若手選手であれば、ただ純粋にその競技が好きで、軽やかに挑戦することが多いでしょう。その頃は「自分軸」がしっかりしており、執着がないため、最高のパフォーマンスを発揮しやすいのです。

しかし、実績を積み、周囲の評価や期待が高まると、「今の評価を落としたくない」というプレッシャー(執着)が強くなります。純粋な楽しさが「義務」「恐怖」に変わってしまうと、メンタルのコントロールが難しくなり、結果としてスランプに陥ってしまうのではないでしょうか。

執着を手放すための「具体的な切り替え方」

執着を手放せば楽になると分かっていても、現実には難しいものです。では、具体的にどうすればいいのでしょうか?

答えはシンプルですが、勇気がいることです。それは、「最悪、すべて失ってもいい」と心の中で頑張って割り切ることです。「もしこれを失ったらどうなるか」をあらかじめシミュレーションし、その時の対応策まで考えておきます。「失うのは嫌だけれど、もしそうなった時はこうしよう」と覚悟が決まると、不思議と執着は薄れていきます。

「なぜ自分はこれを始めたのか」「何が楽しかったのか」という原点の気持ちに戻り、結果がどうあれ、目の前の行動そのものに集中する。この「自分軸」を取り戻すことが、執着を手放すための最良の状態です。

あらゆる人間関係にも通じる「手放し」の知恵

この考え方は、親子関係などの悩みにも当てはまります。例えば子どもを抑圧する「毒親」の問題も、子どもを自分の所有物のように扱い、「失いたくない」という執着が形を変えたものだと言えるでしょう。

しかし、子どもはいずれ自立し、一人の大人として自分の元を去っていく存在です。その変化を受け入れられず、執着し続けることが、お互いの苦しみを生んでしまいます。

執着を手放すことは、決して簡単なことではありません。しかし、「失ってもいい」と割り切る方向性さえ分かっていれば、人の心は少しずつ、楽なほうへと変わっていくことができます。

不安に支配されそうになった時は、一度立ち止まって、自分の持っている執着をそっと手放してみませんか。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。