AIエージェントでも奪えない「人の心に響く」仕事

 前述したAIによる人材の二極化の動きは、企業の生産性向上の意欲に基づいて、引き続きどんどん進んでいくと思います。ではAIを使いこなして生産性を爆上げするのはどんな人かと言えば、1つのタイプは業務をきちんと設計してAIにやらせ、出てきたアウトプットをコントロールしてパフォーマンスを上げる人でしょう。

 要は業務の上流にいるプロフェッショナルで、逆にこうした発想がなく与えられた仕事をこなしているだけの人は居場所を失っていくと思います。

 DXは「どんな状態にしたいのか」というビジョンや業務設計がないと、いくらDXの経験者を採用したりITベンダーと契約したりしたところでどうにもなりません。同じように、ビジョンを欠いたAI活用はうまくいきません。

 もう1つ、AIの活用が進んでも残ると考えられるのが「人の心に響く」仕事です。

 先日、当社のウェブサイトに掲載するコンテンツのためにインタビュー取材を行ったときのことです。その日はいつも依頼しているライターさんの手配がつかなかったため、試験的にインタビュー内容をAIで文字起こしして読み込ませ、原稿化することにしました。

 こうしてAIに書かせた原稿はどうだったか。

 この原稿に関わった全員の共通見解は、話の正確性は高いが文章が平板で、取材で話を聞いた際の熱量やワクワク感がまったく伝わってきませんでした。

 こんな原稿を掲載するわけにはいきません。改めてプロのライターに企画意図と取材内容の文字起こしを渡し、原稿化を依頼したところ、読んでいる人を引き込むような原稿を執筆してくれました。

 AIを訓練してこの水準のアウトプットが出てくるかというと、現時点ではまだ難しいと思います。情報をまとめて文字で伝えることと、人の心に響くような文章を執筆することには大きな乖離があるからです。こうした人の心に働きかけ、動かすことが求められる仕事は、AIが発達しても残っていくでしょう。