世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。
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切り身を揚げる、すぐに食べない…。静岡で起こった天ぷら革命
前回の記事では、焼津にある「サスエ前田店」という一件の魚屋さんに魅了されて、名店が続々と集まってきているという話をいたしました。
さて、本来、裏方ともいえる前田さんの存在が世に知れ渡るようになったのは、どうしてなのでしょうか。
それは「成生(なるせ)」という天ぷら屋が注目を集めたからだと、私は考えています。
そもそも、成生がすごいと言われ出したきっかけは、魚の切り身を揚げ始めたところにあります。
天ぷらというのはもともと江戸前なので、その定義としては、小魚を揚げるのが一般的でした。たとえばキスやメゴチなどの小さい魚を丸々一つ揚げて提供していたわけです。
ところが、成生はある時から、小魚ではなく、切り身を揚げるようになりました。これは、非常に革新的なことでした。また、ひと昔前は「天ぷらは親の仇だと思って、出てきたらすぐに食え」と言われていたのですが、成生はその定説も打ち砕きました。「この魚の、天ぷらとしてのピークはもう少し後なので、少し経ってから食べてください」というようなことを客に提案するようになったのです。
このように、画一的だった天ぷらという料理にバラエティをもたらしたという意味で、成生は世界中のフーディーを驚かせ、日本国内はもとより、海外の富裕層も大勢訪れる有名店になりました。
その裏で成生を支えていたのが前田さんです。店が追究する揚げ方に応じて、魚をオーダーメイドで手当てして、最適な状態で提供していたのです。
そんな陰の仕事がフーディーたちに発見され、「前田さんの魚は美味しい」ということで、今では、「チームサスエ」と呼ばれる、前田さんが信頼を寄せ、主に魚を卸している料理店のもとへ世界中のフーディーが殺到しています。
こうして、静岡県焼津市は、ガストロノミーツーリズムの象徴的な存在になったのです。
※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。






