さらに中長期的には、観光を入口とした、関係人口・準定住層の創出が重要なテーマになります。つまり、単なる訪問者ではなく、年に数回来る人、数週間滞在する人、地域プロジェクトに関わる人を増やしていくことです。
これは宿泊数や消費額には即座に反映されにくいものの、空き家活用、地域雇用、教育・文化交流など、広範な波及効果をもたらします。観光と不動産、観光と教育、観光とウェルビーイングを横断的に捉える発想が求められます。
補助金ありきの観光施策から
ストーリーを持つプロジェクトへ
こうした取り組みを進めるうえで、行政・DMO・民間事業者の役割分担も再整理が必要です。行政は「数値目標の管理者」ではなく、「地域価値の編集者」としての役割を担い、民間は短期収益だけでなく、中長期的なブランド育成の視点を持つことが求められます。補助金ありきの観光施策から、明確な思想とストーリーを持つプロジェクトへの転換が不可欠です。
強調したいのは、「脱・中国インバウンド戦略」は「守り」ではなく、観光立国・日本の次の成長曲線を描くための「攻め」の再設計であるという点です。量の成長が限界を迎えた今、日本の強みは「丁寧さ」「文脈」「余白」にあります。これらは大量消費型観光とは相性が良いとは言えませんが、成熟した旅行者にとっては代替不可能な価値となります。
2026年の旧正月に中国インバウンド特需がないことは、観光の設計思想を方向転換するための、いいきっかけなのかもしれません。むしろそれは、日本の観光が次の10年をどう設計するのかを真剣に考える、静かな助走期間となると考えるべきなのではないでしょうか。中国インバウンドに依存しない観光モデルを確立できたとき、日本の観光地はようやく「選ばれる理由」を、自らの言葉で語れるようになるでしょう。
この突然のピンチをチャンスに変える発想を前向きに持つことこそが日本の観光産業の未来において必要なのだと私は思うのです。
(インテグレート代表取締役CEO 藤田康人)







