第一の視点は、インバウンド市場の多層化・分散化です。これまでのように「最大市場=最優先」という発想を捨て、滞在目的・消費行動・文化親和性ごとに市場を細かく設計し直す必要があります。

 たとえば、長期滞在・自然志向・ウェルビーイング志向の欧米層、教育水準が高くマナー意識の強い台湾・シンガポール層、宗教配慮や家族単位消費に特徴を持つ中東富裕層などは、それぞれ求める体験が大きく異なります。重要なのは「数」ではなく、「地域との相性」と「滞在の深さ」です。

リピート率と口コミ価値が高い分野は?
観光商品の転換が重要

 第二の視点は、観光商品の再定義です。従来の「名所を巡る」「写真を撮る」「買い物をする」という消費型観光から、「学ぶ・整える・関わる」体験型観光への転換が不可欠になります。

 農業体験、食文化の背景理解、地域職人との交流、自然環境の保全活動への参加などは、短期的な売り上げは小さく見えても、リピート率と口コミ価値が極めて高い分野です。これは結果として、広告費に依存しない持続的な集客につながります。

 第三の視点は、オーバーツーリズムを前提としない受入設計です。ここでは「来てもらう」よりも、「どう滞在してもらうか」が重要になります。時間帯分散、季節分散、予約制・会員制の導入、価格による需要調整など、あらゆる手法を使って観光密度をコントロールする必要があります。特に地方の観光地においては、ピーク時の売り上げ最大化よりも、年間を通じた安定稼働の方が、雇用や地域満足度の観点から合理的です。

 そして見逃せないのが、国内需要とインバウンドの再接続です。中国インバウンドに最適化された観光地ほど、日本人観光客が敬遠する傾向が強まっていたという現実は重く受け止める必要があります。価格、混雑、言語、雰囲気――そのすべてが「自分たちの場所ではない」と感じさせてしまっていました。

 脱・中国インバウンドは、結果的に国内観光の再活性化にもつながる可能性があります。日本人が「もう一度行きたい」と思える観光地設計は、海外の質の高い旅行者にも共鳴します。