ミッドウェー海戦の失敗から学ぶ
「目的」を据える際の注意点
戦略を理解するうえで重要なのは、失敗例から学ぶことです。名著『失敗の本質』(中央公論新社)では、「目的の二重性」という興味深い概念が紹介されています。
目的の二重性とは、組織が本来目指すべきゴールが複数存在しているにもかかわらず、優先順位や整合性が明確にされないまま行動してしまうことで、戦略全体が混乱し、中途半端な結果に終わる危険を指摘する概念です。
この典型例として挙げられるのが、太平洋戦争におけるミッドウェー海戦です。日本軍は「ミッドウェー島を攻略する」という目的と「出撃してきた米軍空母を叩く」という目的を同時に追求しようとしました。
しかし、どちらを優先するのかが曖昧なまま作戦が進められた結果、戦略が二転三転し、最終的にアメリカ軍の反撃を許して大きな損害を被ることとなったのです。
この失敗を詳しく分析すると、複数の問題が見えてきます。
第1に、作戦目標の曖昧さが見て取れます。
作戦立案の段階で「島の攻略」と「米空母艦隊の撃滅」という2つの大きな目的が掲げられました。しかし、現場レベルでどちらを優先するかがはっきりしなかったため、攻撃用の爆弾をどう積むか、偵察機をどの範囲へ飛ばして情報収集を行うかといった具体的な行動プランに混乱が生じたのです。
第2に、資源配分の迷走もあったのでしょう。
ミッドウェー島を直接攻撃するのであれば、上陸作戦に必要な部隊や物資を優先的に割り当てるべきでした。
一方、米空母艦隊との決戦を狙うのであれば、艦載機や偵察機の運用を中心に準備を進める必要がありました。
しかし、どちらの準備も同時に進めようとした結果、中途半端な形でリソースが分散し、状況変化への対応力も著しく低下してしまったのです。
第3に、指揮系統の混乱です。
目的の曖昧さや資源配分のブレから、現場での判断にも混乱が生じました。「どのタイミングで空母艦隊を叩くのか」「いつ対艦兵装から対地兵装に切り替えるのか」など、多くの判断が二転三転し、現場の士気や連携が大きく乱れる結果となったのです。
これらの問題が積み重なった結果、アメリカ側による反撃(実際には事前に暗号を解読されていたことも影響していますが)を許し、決定的な敗北へと直結してしまいました。







