「私は自分の力でここを出る」

「今日はどげなことがありましたか」と梶谷に期待されても、なかなかおもしろいネタがない。

「晩餐(ばんさん)会ほどとは言いませんが、何ちゅうかもっとこうヘブン先生一家ならではのお話と言いますか」と言われても、「そげなことを言われてもただ暮らしちょるだけだけんのう」と司之介も言葉に詰まる。

 そこでヘブンが思いついたのは、英語の勉強。トキがヘブンに教えてほしいと言っていたのをちゃんと覚えていて、レッスンをはじめた。

「私らが困っちょったけん、助け船を出してくれたんでしょ」とフミはヘブンの気持ちを察する。

「マエネームエズトキ」という名乗り方を学ぶトキの様子が、翌朝の新聞に掲載された。

 その新聞を川の向こうで、なみ(さとうほなみ)が読んでいる。「川の向こう」に取り残された同士のサワ(円井わん)に新聞の話題をふるが、サワは新聞が買えないから、トキがそんな連載の主要人物になっていたとは知らなかった。

「先生がそげなことで」と言うなみ。うん、確かに。サワも学校で新聞くらい読めるだろう。でもそこはドラマ。

「おトキちゃん、もうすっかり(川の)あっち側の人間だわ。ついこの間まではここで暮らして、うらめしい、うらめしいと傷をなめあっちょったのに。裕福にもなってそのうえ学までついたらあの子、松江の名士だわ」

 なみはそう言って、以前からの彼女の持論だった「女子(おなご)が生きていくには身を売るか、男と一緒になるしかない」は本当だったと確信する。

 では「我々はどげしてここを出るかね」とサワにふる。

「我々は?」
「仲間だない?」

 サワとなみ。川の向こうに残された者同士。いつかこの川を渡るのだと思って歯を食いしばって働いているが、自分ひとりの力ではどうにもならない。現にトキがそれを証明してしまった。男と一緒になってこの川を渡って、いまや貴婦人のような逆転人生である。

「私は自分の力でここを出る」と気張るサワ。

「教員試験に合格して正式な教師になれば給金も上がって借金も返して……」

 そんな彼女を見て、「おサワちゃんはまだまだかかりそうだねー」と他人の心配をしながら、「自分はどげして出るんだって話だけど」とひとりごちるなみ。

 あまりに極端な格差描写。しかも、主人公が結局男と一緒になるしかないことを証明してしまったという展開。こんな夢も希望もない超現実的な朝ドラでいいのか。

「人生逆転」できたヒロインとできなかった友達、夢も希望もない“格差描写”で朝ドラ大丈夫か〈ばけばけ第77回〉
「人生逆転」できたヒロインとできなかった友達、夢も希望もない“格差描写”で朝ドラ大丈夫か〈ばけばけ第77回〉