むしろ、自分だけのスキルと業績にしか関心がない人よりも、問いかけをうまく使って他者の力を引き出せるほうが、これからは高く評価されるようになっていきます。

 世間に目を向けてみても、アイドルのプロデューサー、スポーツチームの監督、バラエティ番組の司会、ビジネスコーチや編集者など、「自分が答えを出す」のではなく、うまく他者に問いかけることによって、「他人の才能を引き出す」ことができる人が、ますます表舞台で注目されるようになってきています。

軍事的世界観から
冒険的世界観のチーム論へ

 あなた1人の実績を磨くよりも、「問いかけ」によるチームの力を高めていったほうが、結果として「あの人と一緒に働くと、気持ちよく仕事ができる」「あの人のチームだと、良い成果が出せる」「あの人のもとでは、次々に良い人材が育っている」といった「あなた自身の評価」へとつながり、活躍の場も広がっていくのです。

 何より、1人で孤独に努力を重ねるよりも、他者の才能を活かしながら働くほうが、圧倒的に仕事が楽しくなるはずです。

 しかし、実際のさまざまな企業の職場に目を向けてみると、お互いの才能を最大限に活かし合っているチームは稀です。

 なぜならば、これまでの経営やマネジメント論は、基本的に「戦争」をメタファとした「軍事的世界観」に基づいていて、従業員はあくまで「戦略」や「戦術」を忠実に実行すべき「兵隊」だと考えられていたからです。

 教育の世界も同様です。歴史的に、学校のカリキュラムや評価制度は軍隊式の規律と訓練をモデルに構築されてきました。

『新 問いかけの作法』書影『新 問いかけの作法』(安斎勇樹、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 私はこのような軍隊型の教育やマネジメントの在り方に問題意識を持ち、人間が本来持っている創造性を発揮できるチームや組織づくりについて研究してきました。

 本書は、私のこれまでの研究と実践の成果を、「冒険型」のチームをつくるための「問いかけ」の技術に落とし込んだ実践書です。特に、マネジャーとメンバーの1on1や、チームミーティングの場面に焦点を当て、質問の技術を体系化しました。

「質問を考えるのが苦手だ」という人も、少なくないでしょう。

 しかしながら、問いかけは人間力やセンスではなく、一定のルールとメカニズムによって説明できる、誰にでも習得可能なスキルです。

 問いかけに必要な要素と工程を分解し、誰にでも実践可能なプロセスに落とし込んだ方法論が、私が提案する「問いかけの作法」なのです。