新刊『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念して、著者の勅使川原真衣さんと、坂井風太さんとの特別対談を実施。坂井さんは勅使川原さんの著書を「すべて読んでいた」そうで、初対面のお二人とは思えぬ熱い話が繰り広げられました。(構成/ダイヤモンド社・大西志帆)

組織の違和感

今こそ大事にしたい「もったいない精神」

勅使川原真衣(以下、勅使川原) 「勝ち逃げ主義」って偶然性だから。たまたまじゃないですか。

坂井風太(以下、坂井) いや、そうですよね。わかるなぁ。だから勝ち逃げ主義が能力主義ともたぶん紐付いてるわけで。

勅使川原 おっしゃる通りです。

坂井 だからそれは社会の椅子取りゲームでもないっていうことでしょうし、個体能力主義ではないものでしょうね。

 例えば、「ほんと坂井さんは才能に恵まれてますね」って言われることがあって。何じゃそれって実は思ってるんですよ。

 自分が成功しているように見えるのって、たまたま自分が合った仕事を見つけてるだけのことなので。
 だから、私の組織とか人間に対して実は一番思ってることは、「もったいない精神」なんですね。

勅使川原 というと?

坂井 これはきれいごとではなく、人それぞれ何かしらの才能があると思っているんですよ。能力って何かの状況最適として作られているはずじゃないですか。

勅使川原 そうです。「持ち味」のない人はいません。

坂井 だから能力が高い、低いとか、この会社で偉い偉くないっていうのは、あくまで山があるんじゃなくて、あらゆるものの環境に個別最適化されたものがあるだけだと思います。

 それは、ある意味「関係論的能力主義」だと思っているんですよね。関係とマッチしてるってだけなので。

「持ち味」の機会損失が起きている

坂井 それで、その「もったいない」と何がつながるかというと、この人はもっと別の会社や別の人と組めば活躍するのになぁって思うのが、すごいもったいないと思ってるんです。

勅使川原 そういうこと、日々ありますね。

坂井 今回の本で表現されているような、個人の「持ち味」が生きる環境や組み合わせを考えればいいのに、「私は才能がない」とか。
 あるひとつの物差しにあてがわなければいけないっていうものがもったいない。才能の機会損失についてずっと思っていて。

勅使川原 いや、おっしゃる通りですね。能力主義っていうのがもともと、人口増社会の時に作られているんですよね。近代化の過程で身分制がなくなって、じゃあ何で分けようかってなった時に、すでにもらいの多寡が人によってあることを正当化しつつ、突っ込まれにくい論理……が多くをもらうなどという、能力主義という配分原理に行き着いたわけですよね。

 だから、これって他者を蹴落として、自分の取り分をできるだけ増やそうとする心理が必ず背後にあるんです。

坂井 おもしろい。

勅使川原 自分の取り分を増やさないといけない。だから、自分の権威を正当化する物差しが必要になるっていうことですよね。それで分け前が減るとしても、「あなたの努力が足りないから」「あなた、◯◯さんより頭が悪いから仕方ないよ」と。世知辛い。

組織の違和感

説明しにくいものから逃げない

坂井 わかる。これちょっと具体で言うと、前職のDeNAで先輩が、「ザ・DeNA社員というのは、ロジカルシンキングが強くてプロジェクトマネジメントが高い奴を言うんだ」って言ってて。なぜか、企画書とかその人の所定のスプレッドシートで書かないと怒られるんですよ。

 その時、その人がロジカルじゃないって思ったんですよ、僕は。

 だって別にロジカルシンキングって知性のいちジャンルでしかないから。説明しにくいものを捨象するものというのは知性じゃないぞってずっと思ってて。

 それなのに、知性を都合よく捨象して自分を有利に立たせるための物差しを持ってきている。
 だからあれはある意味、権力的なものとか、自分の優位性とかプライドをよいしょしたいがゆえに強いちゃうものなんだなと思って。選民主義的なとこがすごく嫌いで。

勅使川原 いやー、すごく「もったいない」の意味がわかった。

坂井 そういう限定的な物差しであなたはダメですと言われることによって、自分はダメな人間なんだって思うのがすごいもったいないと思ってるから、嫌だなと思ってます。

勅使川原 しかも、人口減社会で一部の大企業以外はみんな人員不足に困っているじゃないですか。
 でもそう言いながら、「もっと頭のいい人が来れば」とか「もっと優秀な人がいれば」って。

坂井 それって、「頭がいい」とか「地頭」という物差しを自分の中で教条化しているわけじゃないですか。「これが頭がいい」と言うことによって、自分が一番立場を上にして下を作ることによってやる主義だから、あんまり好きじゃない、本当は。

 便宜的にやってるのを否定するわけじゃないですけど、でもあれの弱毒化を図りたいと思ってるところです。「中和化」か。

勅使川原 あーそうか、撲滅しようとしたらダメですよね。

坂井 撲滅は新たな教条化を生むだけだと思うんですよ。

勅使川原 いかにも!

坂井 テーゼはアンチテーゼになるし、そのアンチテーゼは将来テーゼになってアンチテーゼを潰すから、それはやっぱ違うってことです。

*第5回は1/23(金)公開予定です。