「大好きだったのにー」
やって来たトキに「馬鹿だよね、私」と言うサワ。
「うれしいし、うれしかったし、天にも昇るような。というか、なんならもう天にも昇っちょったのに。断る理由なんてこれぽっちもなかったのに つかめんかった。あのひとの手、どげしてもつかめんかった」
あーあ、庄田の求婚を断ってしまったようだ。
ここからが驚きのセリフ。
こうなったのは「おトキのせいだわ」とサワは責めるのだ。
「私はおトキにはなれん。おトキと同じ道は歩けん。シンデレラにはなれんけん」
「シン デレラ?」
「おトキはシンデレラなんだけん」
トキはシンデレラを知らないのでピンと来ない。だが、庄田にお願いしたものの、どうやらうまくいかなかったことは察する。
「こげなもん持ってきちゃった」と小さい質素な花束をおずおずと差し出すトキ。
庄田が求婚してそれをきっとサワは受けると思ってお祝いに持ってきたのだろう。
トキの引っ越し祝いにサワが場違いな花束を持ってきて、恥ずかしくなって庭に捨ててしまったように、トキも場違いな花を持ってきてしまった。トキとサワ、やっぱり気が合う。そして場違いな花はとてもさみしい。
「ごめーん」と、ひしと抱き合うサワとトキ。
「大好きだったのにー」
おいおい泣くサワをよしよしするトキ。
大好きなのに、なんでこんなことに……。この状況に感情が追いついていかないなか、やたら能天気な次週予告がはじまる。
「気をつけるのですよ おごれるものは久しからず」なんて蛇と蛙(渡辺江里子と木村美穂)が予言めいた事を言っている。
それにしてもサワ。あまりに意固地で不器用過ぎる。白馬に乗った王子様が迎えに来てくれたのに、断るなんて。女性が自立することってこういうことだとしたら、ちょっとかなしい。『あさが来た』(2015年度後期)の主題歌の歌詞に「やりたいこと好きなように自由にできる夢」というものがあった。その通り。やりたいことを自由にできればいいのだ。結婚でも仕事でもなんでもいいのだ。
トキがサワを断固説得して、復縁してほしい。
サワを演じた円井わんさんは、第85回について、このようにコメントしている。
「第17週の最後に、『おトキにはなれん』という、サワのセリフがあります。私は、サワが一番思っていたことは、これなんじゃないかなと思ったんです。だから、それをトキに言えたことで、サワの中では解決できたと思うし、その後のトキらしい受け止め方や返し方にも救われたんじゃないかなと思いました。
トキを避けているシーンを演じている時は、私自身もトキ役の高石あかりちゃんとあまり喋らなくなっていたので、早くサワとトキには仲直りして欲しいと思っていましたね。だから、第17週の撮影が終わった瞬間は、『やっと仲良くできる!』と思って、すぐに2人で『写真撮ろう!』って(笑)。あかりちゃんとは、お互いのパーソナルスペースが合っていて、すごくやりやすいし、一緒にいても楽しいですね」
この展開を橋爪國臣チーフプロデューサーはこう説明する。
「妻が外で働く時代ではなく、家庭に収まるのが当たり前でした。サワは自分の力で資格を取って教師になろうと幼い頃から考えていた。それだけ強い思いがあって、それが彼女を縛っているのかなと思います。さらに、トキという結婚して安定した生活を手に入れた例がすぐそばにいるので、余計に自分はそういうふうには生きないという呪縛にかかっているのでしょう。
多分、庄田と結婚しても幸せな未来はあったし、庄田であれば、結婚しながら教師を続ける道もあったでしょう。でもサワは、そう考えない。人生ってそういうことってありますよね。自分が立てた目標のせいで自分が縛られてしまうことが。サワもそれを薄々わかっているから、トキのせいだと言って泣いてしまうのでしょう」
「お金のために教師になると子どものころ、自分が宣言してしまったために、本当に今の彼女が教師をやりたいのかよくわからないけれど、目指し続けている。しかも、トキがシンデレラストーリーを地でいって、橋の向こうに行ってしまって、自分はそれを真似(まね)できない。だから頑張るしかない。目標に向かって一直線に進んでいるようで、実はそうじゃないみたいなところが、人間らしさだし、『ばけばけ』らしだだし、ふじきみつ彦さんの脚本らしいと思うんです」
なんとも心をぎゅーっとねじられるようなお話だ。









