開業式典の動画で
一番泣いたシーン
――いざ完成を迎えた時はどんな思いでしたか?
齋藤「最初はあまり実感が湧きませんでした。旧駅ビルを解体して更地にするところから全部見てきましたが、工事中に16回も駅の通路切り替えを行い、そのたびに苦情が来ておわびしたことが印象に残っており、開業式典の動画でそのシーンが出たときは感慨深く、一番泣いてしまいました。大きい事故もなく無事にできて本当によかったです」
――この1年を振り返ってどうでしたか?
齋藤「あっという間の1年だったなっていうところがありますね。数字は非公表ですが、開業から時間がたっても順調に推移しています。路面電車の乗り入れが全国で話題になり、ちょっと乗ってみようということで利用も好調と聞いています。開業リスクとして駅周辺の渋滞悪化を懸念していたのですが、鉄道と車、自転車も使っていただきながら、大きい混雑もなく、分散しています」
――とはいえ、もうひとつの核である「紙屋町・八丁堀地区」は、「広島駅周辺地区」の変化に危機感を抱いているのではないですか。実際、昨年4月以降、紙屋町のそごう広島店に入っていた「ポケモンセンターヒロシマ」がekieに、八丁堀の東急ハンズがminamoaに移転するなど、地殻変動を誘発しています。
広島市中心部・紙屋町のそごう広島店(筆者撮影)
齋藤「客を取ろうなんて考えは持っていなくて、まさに共存で、みんなで広島を盛り上げましょうという考えです。地元の会合では『僕たちはJRの本社が大阪だから、広島の地でどんなに頑張っても、皆様から外様企業だと思われていると思います。我々の使命は中長距離のお客様を広島の地に新幹線とか在来線を使って運ぶことです。でも、そこから盛り上がっていないと広島にお客様は来ない。だから、駅ビルの盛り上がりを駅だけじゃなくて、町に還元して、みんなで広島を盛り上げたい』とストレートに話しています」
齋藤 「すると『JRさんは敷居が高いと思って声かけにくかった』と言ってくれるので、いやいやお互いもうける話を一緒にやりましょうとなります。駅と街をつなげるイベントも計画していますが、駅と街を無理して一緒にする必要はありません。駅は駅、町は町で楽しく交流しながらそれぞれの文化と歴史で盛り上がれば、共存の意味があります」
minamoaを中核とする駅南口広場整備は、実はまだ終わっていない。2028年春にペデストリアンデッキが福屋百貨店側に接続し、2階ににぎわい広場を開設。2029年春にはデッキがビックカメラ側とも接続し、南口交通広場の路線バスエリア、マイカーエリアが全面オープンする。駅ビルの盛り上がりは市街地にも波及するのか、来年またこの地を訪れて確認したい。







