ターミナルビルに乗り入れる試運転電車(広島電鉄提供)ターミナルビルに乗り入れる試運転電車(広島電鉄提供)

広島電鉄は8月3日、広島駅から延びる路面電車の新路線「駅前大橋ルート」を開業した。これにより、移動時間やアクセスの利便性はどう変わるのか。そして、「100万都市」の広島が「路面電車のまち」であり続ける歴史的背景とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

「駅前大橋ルート」の開業で
アクセス利便性が向上

 広島電鉄軌道線(路面電車)は8月3日、「駅前大橋ルート」を開業した。JR広島駅ターミナルビルへの乗り入れで移動距離が60メートル短縮し、乗り換え時間は約1分短縮、ルート変更で線路が200メートル短縮し、所要時間は約4分短縮された。

乗り入れ区間断面図乗り入れ区間断面図(広島市資料より) 拡大画像表示

 広島駅〜紙屋町東間は旧ルートの2.1キロから、駅前大橋ルートは1.8キロとなり、所要時間は11分から7分に短縮。表定速度(停車時間を含めた平均速度)に換算すると時速11.4キロから時速16.3キロに向上した。これは距離短縮以上に、城北通りとの立体交差化が寄与している。

 また、同日のダイヤ改正で1号線は朝ラッシュ時間帯4本、2号線は夕ラッシュ時間帯2本を増便。1号線の増発分のうち2本は社会実験として、12月31日まで一部の停留場を通過する同社初の「快速便」として運行し、所要時間を1分短縮する。

 さらに2026年春には、旧ルートの比治山下~的場町~稲荷町間を経由し、広島市中心部の紙屋町、八丁堀と平和記念公園、現代美術館などを結ぶ「循環ルート」の営業を開始する予定だ。

 広島電鉄はこれまでも広島駅南口広場に乗り入れていたが、旧ルートは駅前通りを迂回していたため中心部への所要時間が長く、アクセス利便性の向上が望まれていた。また、乗降場の処理能力が不足し、ラッシュ時に遅延が発生しやすい問題があった。

 そこで広島市が2014年9月に「広島駅南口広場の再整備等に係る基本方針」を策定し、広島電鉄は2019年11月に軌道法の特許を得て、翌2020年に着工。方針決定から10年、着工から5年越しの開業となった。