3億円を求める提訴に
ネット民から誹謗中傷の嵐

 7年ほどかかって、治療が完了しました。と言っても、脊髄損傷が不可逆的だったため、首から下は動かないという状態は変わらず、ただ、彼が少しでも回復するよう努力していた日々でしたし、かつ、社会で生きていけるよう訓練を積んでいた時期でもありました。

 そしていよいよ、彼の将来のため、学校との闘いが始まりました。と言っても彼が在籍していたのは公立高校で、顧問教師は公務員であるため直接責任を問えず、高校が所属する都道府県が被告となる国家賠償請求になりました。

 私は、彼の将来への損害を算出し、当の自治体に3億円の損害賠償を請求しました。

 学校の管理下、たとえば授業、登下校、部活動、遠足・修学旅行中での事故は独立行政法人・日本スポーツ振興センターの「災害共済給付制度」により給付金が支払われますが、金額的には数百万円程度で、このように生涯にわたってリハビリが必要なけがを補償するには全く足りません。

 地方裁判所に訴えを起こしましたが、途中でお父さんがご病気で亡くなってしまいました。彼の将来を思うと無念だったと思います。

 裁判をしている最中、この裁判のことがマスコミに報じられました。すると、ネット民(主には2ちゃんねるとX)の一部から、「自業自得だろう」「他人のせいにするなんて悪いやつだ」と、このように書くのも嫌気がさすほどに(実際にはもっと酷い言葉でした)誹謗中傷を受けました。

 裁判ごとというのは、報道されるのは一部であって、全体を見ないと正しい批判などできようはずもないのに、1分ほどのニュースで全体を知ったような気になって攻撃してくる人種にはがっかりしました。

被告の都道府県は責任を否定し
生徒側の過失を言い立てた

 さて、都道府県は真っ向から争ってきました。おじいちゃんの弁護士が、「自分で鉄棒から落ちたんだから本人の責任」「顧問はプロの外部コーチに任せてたんだから責任がない」「だから1円も支払う義務がない」という血も涙もない骨子でした。

 そして、毎回毎回、彼のことを責め続ける内容の準備書面が提出されました。そんな審理の中で明らかになったのは、鉄棒はかなり長期間取り替えられていなかったこと、顧問は全く現場に出ていなかったこと、雇ったというコーチもたまにしか現場に来ていなかったという事実でした。

 その後、ついに判決の時が来ました。