傍聴席には、たくさんのマスコミが駆けつけていました。聞くと、都道府県側のおじいちゃん弁護士が、わざわざ呼んだそうなのです。都道府県が勝つことを報じて欲しいと。
そして判決が下ったのですが「本人の不注意が原因」という理由で、補償はゼロ円という驚きの内容でした。敗訴判決です。
マスコミは被害者勝訴を望んでいたようで、がっかりしたように帰っていきましたし、たいしてニュースにもなりませんでした。
このように敗訴判決が出た場合、2週間の間に高等裁判所に控訴できます。そこで本人と家族が控訴すべきかどうかの会議をしました。国家賠償請求は、かように、勝訴率が低いのです。かなり大きな労力と時間をかけて闘ったにもかかわらず敗訴判決を受けて私はうなだれていました。
即刻控訴して高裁へ
被告側は自信満々だが…
しかし。本人とその家族の、闘志はふつふつと燃えていました。私は、高等裁判所への控訴を依頼されました。私がくじけている暇はないのです。私も決死の闘いを覚悟しました。そうして激闘し、迎えた判決の日。またもや傍聴席はマスコミで溢れていました。
またもやおじいちゃんが呼んでいたようで、彼は都道府県の勝ちを信じて疑わなかったのです。静まりかえる法廷に「それでは判決主文を言い渡します」と言う裁判長の声が響きます。
「主文。原審判決を破棄する。被告は原告に3億円を支払え」
『人生のトラブル、相場はいくら?』(山岸久朗、幻冬舎)
神聖な法廷であるのに、思わず立ち上がって吠える私とご家族。大きな口を開けて愕然とするおじいちゃんと都道府県職員たち。沸き立つ傍聴席。私は仮に逆転して勝っても、「過失相殺」で、何割かは減じられるリスクを依頼者に説明していましたが、判決は100:0で勝っていました。
その後、法廷を出てから、皆で嬉しさのあまり抱き合って泣きました。そのとき皆で撮った笑顔の写真は私の宝物です。どこにも出すことはできませんが。
その後彼は、勉強に励み、自力で優秀で有名な大学に合格しました。私は彼の助けになるべく、将来の介護費などを適正に補償させることはできます。しかし、彼の体を元に戻すことはできません。弁護士の無力さを感じる瞬間です。
もちろん、最初に挙げたスポーツが特に危険だからといって、そのスポーツ自体のすばらしさを否定するものではありません。しかしこんな話があったことを記憶していただけたら幸いだと思い、ここに記述しました。







