979匹のイエネコおよびヤマネコのDNAを解析した結果、現代のイエネコはすべて中東に棲息するリビアヤマネコ(Felis lybica lybica)を祖先としていることを突き止めた。
これによって、きわめて大きな疑問が生じる。野生ネコ科の41種のうち、なぜ1種類だけが家畜となったのか?
幾多のネコ科動物のなかで
リビアヤマネコだけが飼い慣らされた
人間は昔から、大きくて吠えるものから小さなヤマネコまで、あらゆるネコ科の動物に魅了されてきた。イエネコが誕生するはるか以前から、世界各地で野生の猫が飼われていた。
プロヴァンス大学のエリック・フォーレとアンドリュー・キッチナーは、この観点から大量の文献を調べ、すべてのネコ科の動物種の約40%がある時点で人間に飼われていたと推定した。
とりわけ古代エジプト人は、さまざまなネコ科の動物を飼育する技術に長けていた。チーターやリビアヤマネコだけでなく、カラカル、サーバル、ジャングルキャット(Felis chaus)も飼っていた形跡がある。
ただし、現代のイエネコに遺伝的つながりはないため、これらの動物の飼育はすぐに立ち消えになったにちがいない。なぜか?はっきりとした理由はわからない。チーターのように、人間の飼育下での繁殖が難しかったのだろうか。あるいは、単になつかなかっただけかもしれない。
イエネコの祖先はリビアヤマネコだけだったというドリスコルの研究チームの発見をきっかけに、この関係が盛んに研究されるようになった。
そして遺伝子や考古学上の証拠を分析した結果、現代の猫の遺伝子プールは、実際には地理的に異なる2つのリビアヤマネコの集団から引き継がれた古代の遺伝物質で構成されていることが明らかになった。
一方は、当初の予想どおりエジプト周辺の集団。もう一方は、さらに北の「肥沃な三日月地帯」として知られる中東に棲息する集団だ。この地域は「文明の発祥地」とも呼ばれている。
これらの遺伝物質は、それぞれ別の時期にイエネコの遺伝子プールに追加されたと考えられており、肥沃な三日月地帯のほうがエジプトよりもかなり早かった(約3000年前)。にもかかわらずエジプトの猫が広まりはじめると、こちらのほうが優勢となった。







