そうした猫は、仲間の有無にかかわらず、路上での生活に慣れていき、運がよければ新たな家を見つける。

 あるいはビッグジンジャーたち(編集部注/著者が研究対象とした野良猫の集団)のように、人間から離れて数世代を経た結果、警戒心をむき出しにするものの、食べ物にありつける場所があれば、比較的大きな自由度の高いグループ(コロニー)を形成することもある。

 研究の結果、こうしたコロニーには、共同で子育てを行う血縁関係の母猫たちを中心に社会構造が存在することが確認されている。オス猫は通常、グループから離れて生活する。こうした状況では猫どうしの社交術がきわめて重要だ。

『ネコの言葉を科学する』書影『ネコの言葉を科学する』(サラ・ブラウン著、清水由貴子訳、草思社)

 私が観察したのは、不妊手術を受けた猫たちのコロニーだったが、子育ての絆がなくても、交流は行き当たりばったりではなく、多くの猫にはお気に入りのパートナーがいた。

 単独行動から集団生活へと切り替える能力は、イエネコの繁栄に欠かせないものだった。その背後にあるのは、新たなコミュニケーション方法を編み出すうらやましいほどの才能だ。

 猫は完全に家畜化されたのか。それとも、まだ道半ばなのか。この問題に答えるのは不可能に近い。

 忍耐強い、集団生活になじむなど、猫には犬や他の家畜と同じように多くの家畜動物の特徴があるが、明らかに犬のほうが何歩も先を行っている。

 たとえば、猫は犬ほど愛想がよくない。ひょっとしたら、いつか猫も私たちの言葉に一心に耳をかたむける日が来るかもしれない。あまり期待はしないでおこう。