相手によって話し方を変えるのは
猫も人間も同じだった
私たちがなぜ赤ん坊や猫にこんなふうに話しかけるのかは明らかにされていないが、この謎はいまに始まったことではない。
この問題について、アメリカの化学者で歴史家のH・キャリントン・ボルトンは、1897年に発表した大胆かつ興味深い論文『家畜に話しかける際に用いる言語』で次のように手厳しく述べている。
相手に理解してもらうのが難しいと感じると、人は言葉遣いを動物の知能レベルまで落とそうとするが、これは若い母親が「赤ちゃん言葉」などというばかばかしい滑稽な話し方をするのと同じだ。
乳幼児や家畜が、普通の言葉よりも意味不明な音を理解すると考えられている理由は説明が難しい。だが、おそらくボシュエが書いているように、「Les oreilles sont flattees par la cadenceet l’ arrangement des paroles」(大まかに翻訳すると「耳は言葉のリズムや響きで落ち着く」)
『ネコの言葉を科学する』(サラ・ブラウン著、清水由貴子訳、草思社)
ボシュエのこの魅力的な表現は真実に近い。赤ん坊が通常の大人の話し方よりも赤ちゃん言葉を好むことは研究で実証されている。マザリーズの独特な話し方によって「楽しい」リズムやトーンが生まれ、これに赤ん坊はとりわけ反応を示すのだ。赤ちゃん言葉は言語の学習に役立ち、話し手との絆が生まれる。
同じ方法で猫に話しかけることで、私たちは無意識に猫をわが子のように扱っているのかもしれない。あるいは、気づかないうちに鳴き声と同じくらいの高い声を出している可能性もある。
なかには、さらに一歩進めて、実際に猫の鳴き声を真似てやりとりする人もいる。こうした傾向は、おもに本気で猫と遊ぶ若者に見られる。とはいえ、猫以外のペットの場合はほとんど聞かれず、どうやら猫の飼い主特有の習慣のようだ。







