ニカストロはこれを「個体発生的儀式化」の例だと指摘する。つまり、異なる種の動物が社会的交流を繰り返すことで、徐々に互いの行動を形成するプロセスだ。
猫との交流を重ねるうちに鳴き声を解釈できるようになるのであれば、ミャオという鳴き声そのものに何らかの情報が含まれている可能性がある。
現在では、他の動物はさまざまな鳴き声を発するものの、多くの「動物語」に共通の特徴があると考える研究者が多い。エトヴェシュ・ロラーンド大学(ハンガリー)のタマーシュ・ファラゴーの研究チームは、人間が犬の鳴き声を聞くときには、人間どうしで相手の声の感情を読みとるための本能的な基準を用いることを証明した。
これは、1872年にダーウィンが提唱した「声の高さが特定の感情との関係を有することは大いに明らかである」という考えに基づいている。したがって、私たちが猫をはじめ、他の動物の鳴き声を聞いて無意識に感情を読みとるのは、ごく自然な行為なのだ。
うれしいか悲しいかくらいは
鳴き声の高低で判別できる
猫の鳴き声を音声学的に分析する試みも行われている。
ある研究では、楽しい状況(おやつをもらう)で録音された鳴き声は、不快な状況(キャリーバッグで車に乗せられる)に比べて高いことがわかった。
また、スウェーデンのスザンヌ・シェッツの研究チームは、状況に応じて鳴き声にかすかな違いがあることを突き止めた。猫がどう感じているかが鳴き声の高さやイントネーションに影響することを発見したのだ。
『ネコの言葉を科学する』(サラ・ブラウン著、清水由貴子訳、草思社)
機嫌のいいミャオ(挨拶や食べ物をねだるときなど)は上昇調で、緊張したミャオ(キャリーバッグで運ばれるときなど)は下降調となる。
異なる状況で録音された機嫌のいいミャオ(「食べ物をねだる」ときや「かまってほしい」ときなど)の微妙な違いを理解するのは至難の業かもしれない。
けれどもシェッツは、ポジティブ/うれしい(食べ物や挨拶)ミャオとネガティブ/悲しい(病院にいるとき)ミャオを聞き比べる実験で、期待を大幅に上回る結果が出たことを報告している。
前述のニカストロの実験と同じく、猫を飼ったことのある参加者のほうが、飼った経験のない参加者よりも正確に聞き分けることができた。
どうやら私たちは、猫の鳴き声から基本的な感情の情報を引き出すことができるようだ。







