「早くしろ」「社長を出せ」電話やメールで執拗に攻撃

 それからAは毎日Bに電話やメールで、

「早くネジをよこせ」
「へなちょこの君じゃ役に立たない。上司……いや、社長を出せ!」

 などと執拗に攻撃した。上司であるC課長にも、「ホント困りますよね、Bのやつ。こんなトロい社員、ウチにはいませんよ。そう思いませんか?」などと自分の言動に同意を求めた。

「まったくだ。納期が遅れているのはむこうさんが悪いんだから、もっと締め上げてやればいいよ。君にはバンバン売ってもらわないと僕は部長になれないからね。アハハハ……」

 C課長はAが課長になれば、自分は営業部長に昇進すると思い、ハッパをかけた。

乙社長が甲社を訪問

 ところが1月下旬のある日、乙社長がアポイントなしで甲社を訪れ、甲社長に面会を求めてきた。

 たまたま社長室でパソコン作業をしていた甲社長は、乙社長を応接室に通した。

「あれ?乙さん、急にいらっしゃるとは……いったいどんなご用件ですか?」

 乙社長はソファに腰かけると、努めて冷静に答えた。

「御社を担当させて頂いているBが、Aさんから再三理不尽なことを言われていると訴えてきました。彼はそのことで精神的に追い詰められて不眠症になり、今は会社を休んでいます」

「えーっ!」

 驚く甲社長に、乙社長はBから聞いたという訴えの内容を説明した。そしてBが部署の先輩や上司にも相談しており、皆で対処方法を考えていたと語った上で、

「ネジの原料が手に入らず、納品遅れでご迷惑をおかけしていることはお詫びします。しかし正直申し上げて弊社の社員がここまでの扱いを受けるとは思っていませんでした。事実かどうかを調べて頂けませんか?」

「しかし、そんなこと急に言われても……」

 甲社長はあきらかに「めんどくさいな」といった表情を露わにした。その思いを感じた乙社長は、強い口調で言った。

「このままでは、Bだけではなく誰も御社を担当したがらないでしょう。となると取引の継続は難しいと判断せざるを得ません」

 甲社長はとりあえず、Aに確認するとだけ約束し、乙社長には引き取ってもらった。

「どうしよう……。乙社のネジがないと新製品が作れない。あのネジは特許品だからな……」

 困った甲社長は、D社労士にメールを入れ、面談の約束を取り付けた。