甲社が取るべき対処法は?

<甲社の対処例>
(1)乙社に対しての対応
 ・正式に謝罪する。この場合感情ではなく、企業としての姿勢を示すことが重要。
 ・再発防止策を提示し信頼回復に努める。
 ・Bに対して謝罪する。場合によっては慰謝料などの提示を行う。

(2)Aに対する対処
 ・カスハラ言動に対して厳正な指導または懲戒処分(ただし就業規則への明記が必要)を検討する。
 ・業務から一時的に外し、担当変更を行う。相手企業との関係悪化を防ぐためにも必須。
 ・ハラスメント教育及びコミュニケーション研修を受講させる。行動改善の機会を与えることが重要。
 ・直属の上司(C課長)について、管理に問題があった場合は適切な方法で対処する。

(3)再犯防止の一例(会社としての対策)
 ・取引先対応のガイドラインを策定もしくは整備する。言動の基準・連絡頻度・クレーム対応の手順などを決める。
 ・複数名での対応・取引先とのやり取り内容などについての記録徹底をルール化する。
 ・カスハラを含めたハラスメント防止研修を定期的に実施する。「顧客側でも加害者になり得る」という認識を社内で共有する。
 ・評価制度の見直しを行う。Aのように「昇進プレッシャー」が暴走の引き金になるケースは多い。過度なプレッシャーをかけていないか確認する。

 D社労士の助言を受けた甲社長は、翌朝当事者のAとC課長に事実確認を行った。AについてはBへの不適切な言動を認め、C課長はAの言動を注意しないばかりか同意するなど管理能力に問題ありとして、その場で厳重注意を行い、懲戒処分をするか否かを後日懲罰委員会で検討することにした。

 乙社長には、事実確認の結果と担当者の交代、Bに対しての謝罪及び損害賠償の提示、再発防止策の実施方針を説明したうえで正式に謝罪し了承を得た。そして再発防止策に取り組む準備を始めた。

2人とも昇進の夢が消えた

 厳重注意を受けたAとC課長は、部屋に戻るとすっかり意気消沈してしまった。

「これで昇進はパーだな。それどころか懲戒処分だなんて……」

 Aの言葉にC課長もうなずいた。

「俺も部長の座が……」

「課長、仕方がないですよ。社長から『取引先にカスハラするとは何事だ。わが社の信用はガタ落ちじゃないか!』とこっぴどく叱られたし……」

「こんなに大事になるなんて……。完全に認識不足だったな。後日、社長が乙社に謝罪に行くそうだから俺たちも一緒に行って頭を下げてこよう」

「ぜひ、そうしましょう」

 2人は反省することしきりであった。