「刑務所は酷いとこだったけど、いろんな人の話を聞くことができて、少しは成長できたと思う。尚美は変わらないな」
「何が言いたいの?」
「君がもう少ししっかりしてくれていたら、こんなに俺ひとりで悩まないよ」
「悩んでいることがあるなら、ちゃんと話してよ」
「今までだって話してきたさ。でも、いつもたいして考えもせずわからないとか、良太が決めてって言うだろ?」
確かに、私は夫に依存した頼りない妻だったかもしれません。
「自分を本当に幸せにできるのは自分だけだよ」
私は夫に突き放された思いでした。そして、麻美に言われた言葉が、しばらく頭を離れませんでした。
「あなた捨てられるわよ」
『お金持ちはなぜ不幸になるのか』(阿部恭子、幻冬舎)
私はこの日から貯金を始めました。夫の収入に頼りきりで、自分の貯金を持つという発想がなかったのです。
これから働いた分の給料はきちんと請求し、堅実に貯めておく。この町でできることはそう多くはないし、私はまだまだ母親として家族から必要とされるでしょう。それでもこの先、たとえ夫に見放されることがあっても、かつてのように路頭に迷わないよう備えておくことに決めたのです。
小さなことですが、私の自立への一歩です。






