そこでノイマンは、マンハッタン計画の中で新しい自動計算機の開発にも携わることになります。そこで開発されたのが、プログラム内蔵方式のコンピューターです。ノイマン型コンピューターと呼ばれ、現在のコンピューターの動作原理にもなっています。

 こうして開発されたコンピューターを、ノイマンは気象学・天気予報に応用します。それがコンピューターを使った数値予報です。ノイマンは数値予報が実現可能であることを実証してみせました。驚くべきことにノイマンは、天気を操るアイディアも提案し、地球温暖化も予測しています。

映画『博士の異常な愛情』の
モデルになる天才ぶり

 天才ノイマンの知性のコアにあるのが数学です。数学が及ぶありとあらゆる分野にノイマンは入り込んでいきました。経済学にノイマンが手を付けない理由はありません。

 ノイマンによる経済学への貢献は、フォン・ノイマン多部門成長モデルによる経済成長理論への貢献、生産集合・再生産の生産システム概念の導入、ブラウワーの不動点定理を使った競争経済の均衡の存在証明などがあります。

 そして最も大きな業績がゲーム理論の創始です。1928年、ノイマンは論文「社会的ゲームの理論について」の中でゲーム理論の数学的基礎を提示します。

 そして、1944年にノイマンは経済学者オスカー・モルゲンシュテルンとともに1200ページの大著『ゲームの理論と経済行動』を著します。

 ルーレットやチェス、じゃんけんなどの室内ゲームから、政治、経済、社会に至る様々な問題をゲームとして定式化して考察するのがゲーム理論です。現在、経済学においてゲーム理論はミクロ経済学・マクロ経済学と並ぶ重要な分野として確立しています。

 さらにゲーム理論は、経済学だけでなく経営学、政治学、法学、社会学、人類学、心理学、生物学、工学、計算機科学などの様々な学問分野に応用されています。

 米ソ冷戦時代の核兵器競争の中に生きたノイマンは、ゲーム理論を国家間の紛争に対し実践することになります。原爆、コンピューター、数値天気予報そしてゲーム理論がたった1人の人間の頭脳によりつくりだされました。ノイマンが、スタンリー・キューブリック監督の映画『博士の異常な愛情』のストレンジラヴ博士のモデルの1人と呼ばれる所以です。