夫の浮気をやめさせる
妻の戦略(ケース2)

 ケース1では、離婚に至る場合の利得を(マイナス100、マイナス100)とした場合に離婚しにくいことがわかりました。離婚に至る場合の利得を(マイナス20、マイナス20)と変えてみると、妻の戦略はどう変わるでしょうか。夫婦ともに強気に出ても損失がケース1よりも小さく(利得は大きく)なっています。

 ケース1と同様、妻の利得を計算して確かめてみます。

図4-13:夫婦の戦略利得表(ケース2)
同書より転載 拡大画像表示

妻の利得
=-20pq【左上】+10(1-p)q【右上】-10p(1-q)【左下】+0(1-p)(1-q)【右下】
=-20pq+10q-10pq-10p+10pq
=-20pq+10q-10p
=q(-20p+10)-10p

 そこで「-20p+10」の符号を考えます。これが正であれば、妻の利得はqの増加関数となります。「-20p+10>0」より夫が浮気をする確率pが50%未満ならば、q=1、すなわち妻が「強気に出る」を選択すれば妻の利得は最大になります。逆に、夫が浮気をする確率が50%以上ならば、q=0、すなわち「1q=1」となり、妻が「弱気に出る(黙認する)」を選択するとき妻の利得は最大になります。

 つまりケース2では、夫が浮気をする確率が50%以上ならば、妻は浮気を問い詰めない(黙認)方がいい、という結論となります。

『人生は数学でできている』書影『人生は数学でできている』(桜井 進 中公新書ラクレ 中央公論新社)

 妻は夫が浮気をしているかもしれないと疑ってはいますが、浮気している確率は50%を超えるかまでは疑問があると考えているとします。もし40%だとすれば、ケース1では妻は浮気を問い詰めない戦略をとり、結果離婚は回避されます。

 しかしケース2では、妻は浮気を問い詰めた方がいいとなり、離婚する確率が大きくなります。

 ケース1は子供が産まれたばかりの若い夫婦(離婚はできるだけしたくない)、ケース2は離婚もいとわないと考えている熟年夫婦とみることもできます。

 いずれにしても、ある程度夫が浮気する可能性が大きい場合には、妻は問い詰めないことが最適な戦略となります。これを妻が泣き寝入りすると捉えるか、笑い飛ばすと捉えるかはゲーム理論の範疇を超える問題です。