この作品の中では「旅」の位置付けが二人の性格の違いを示している。アレックスにとっては旅は非日常であり、「バカンス中のアレックス」はいつもと違う自分であろうとする。一方、大学卒業後に旅行ライターとなったポピーにとっては旅こそが日常であり、同じ場所に居続けることを良しとしない。

 正反対の二人だからこそ引かれ合う。自分と違う破天荒さ、あるいは誠実さを持った相手に嫉妬したり、眩しく感じたりすることは、誰しもある。その相手が親友だったり、恋人だったりすることもあるだろう。

 アレックスとポピーはそれぞれ、人生における「安定」と「リスクと挑戦」を象徴する人物である。着実な安定を選ぶのか、リスクがあっても挑戦するのか。安定を選択しがちな人はリスクを取る人に憧れるし、破天荒に生きる人は実は心の中で着実な人を羨ましく思っていたりする。普遍的なテーマであるからこそ、多くの人に心当たりがあるだろう。

そもそも日本市場は視野になかった?

 さて、英語圏でかなり視聴されているこの作品が、日本で無風状態なのはなぜか。理由はいくつか考えられる。

 まず英語圏では、原作がベストセラー、作者が人気作家、という土台があったが、日本での翻訳版は一部のファンをのぞいてほとんど知られていない。日本におけるプロモーションがほとんどない状態だった点は大きいだろう。そもそも日本市場が視野に入れられていない作品、とも言えるかもしれない。

 原題は『People We Meet on Vacation(旅先で出会った人々)』とシンプルだ。これは邦題にありがちな問題で、例えば『きみに読む物語』の原題は『The Notebook』、『めぐり逢えたら』は『Sleepless in Seattle』である。

 そっけなく感じられる原題が邦題で恋愛要素を足されることは多々あり、今回もそのケースだ。ラブコメを好む層への訴求として正しいやり方だが、一方でそれ以外の層を排除してしまう危険もある。実際に見てみると男性でも共感できるポイントは多い作品なのだが、メインビジュアルやタイトルから「女性向け」と判断する人が多いだろう。