また、少し気になったのは、ポピーが体現するバリキャリでリッチな若い女性の世界観である。

 大学卒業後の彼女は人気のある旅行ライターになっていて、世界中を飛び回って記事を書いている。ファッション雑誌から飛び出してきたような格好をしていて、ポピーの着こなしを楽しむのも、この映画の見どころの一つである。

「SATC」の世界観は令和の若者に受け入れられない?

 ただ、このような女性像が果たして2026年の日本でどの程度「イケてる」と思われるのか、やや疑問に感じた。25年ほど前、『セックス・アンド・ザ・シティ』が大ブームだった頃ならわかるのである。NYでは今でもそれがカッコいいのかもしれないが、長らく経済が停滞する日本では価値観がだいぶ変わってしまった。

 旅行ライターという職業も、旅行系YouTuberの方が、現代ではしっくりくるように感じる。どことなく2000年代かそれ以前の雰囲気にとどまっているようにも感じる作品なのだ。

 だからこそ、アラフォー世代以上には受けやすいとも言えるかもしれないが、令和の若者がどれだけピンと来るか。それが日本での視聴数に表れているのかもしれない。

 そもそもではあるが、ネットフリックスにおける日本の視聴傾向は他国と異なると言われている。

 日本のランキングでは国内制作の作品やアニメがトップ10を占めやすい。よく言えば自国コンテンツへの愛が強く、悪く言えば視線が内向きなのだ。また、20年ほど前までは欧米への憧れが強かったが、現代では韓国のコンテンツが伸びてきたことで、ラブストーリーからシリアスまで韓国作品が強い部分もある。英語圏のラブストーリーに、昔よりは関心がなくなっている状況もあるように感じる。

 そもそも現代の若者は恋愛に関心を持たなくなってきているという分析もあるが、これはまた別の話になりそうなので、今回はここまでとしたい。

 ともあれ、『あなたと私の夏の旅』は、いわゆる「カウチポテト」にぴったりな後味が良い作品である。一見して、映画では省略されたエピソードも多いとわかるので原作も読んでみたくなった。「これが全世界で広く人気の映画なのか」と理解したい人には、ぜひおすすめしたい。