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「まさか、自分が遺骨を持って都内を歩き回ることになるとは思いませんでした」都内で歯科衛生士として働く寺田香奈江さん(仮名・44歳)は、数カ月前の出来事を苦渋の表情で振り返りました。寺田さんにはご自身の旅行用ボストンバッグに、亡くなった両親、そしてさらにご先祖の「遺骨」を詰めて移動した経験があります。今、地方にある墓を閉じる「墓じまい」が急増していますが、ひと言で墓じまいといってもさまざまなトラブルが発生しています。今回は「自宅以外の改葬先が見つからず、行き場を失った遺骨」に悩まされている事例を取材しました。(取材・構成/ライター 岩田いく実、監修/長岡行政書士事務所代表 長岡真也)
墓守のいない故郷
放置すれば「無縁仏」という恐怖
寺田さんの実家は新潟県内の某所、墓は冬になると雪深くなる山間部の共同墓地内にあります。一人娘の寺田さんは専門学校進学を機に都内へ。卒業と同じ時期に父の忠雄さん(仮名)が亡くなりましたが、新潟県には戻らず都内の歯科医院に就職し、現在に至ります。
母の奈々江さん(仮名)は香奈江さんが40歳の時に亡くなりました。都内で長く暮らす香奈江さんは未婚。実家を継ぐ者はなく、両親の死後は墓も荒れ放題となっていきました。
「元々数年に一度、盆に帰るのが精いっぱい。山の中にあるので、車がないとお参りが難しいんです。私はペーパードライバーで車も持っていません。母が亡くなり、母の車を処分したことをきっかけにさらに足が遠のきました」
大震災で荒れた実家と墓
親族から「そろそろ処分したら」
寺田さんが直面したのは、現代日本の縮図ともいえる「墓守不在」。かつての日本は「家」制度に守られ、家督相続をする者が墓守として墓地の管理を引き継ぐことが一般的でした。しかし、少子高齢化に核家族化、そして地方の衰退によって管理できなくなった墓が急増しています。
寺田さんに一本の電話が入ったのは2024年の1月末頃でした。令和6年能登震災の影響で新潟県内も大きく揺れ、墓石の花立てやろうそく立てなどが散乱したのです。
寺田さんの親族が荒れた様子に気付き、香奈江さんに連絡。「跡継ぎもいないし、実家も墓も放置しているなら、そろそろ処分したらいいのでは」という親族のアドバイスを聞き、寺田さんは実家の売却と墓じまいを決意。実家は親族が買い取ってくれたのですが、問題は墓でした。







