総予測2023#26Photo:kyodonews、Chesnot/gettyimages

仏ルノーによる日産自動車の救済劇から23年。両社のアライアンスルールの見直し交渉は意見統一を図れず、その結論は2023年に持ち越されることになった。特集『総予測2023』の本稿では、交渉の争点を明らかにしつつ、23年間に及ぶルノーによる「日産搾取のカラクリ」を詳細な試算で解き明かす。また、ルノーと対等の関係構築を目論む日産の「足りないピース」についても取り上げる。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

日産によるルノー出資引き下げ交渉がヤマ場
協議の論点は「出資比率」と「EV新会社」

 仏ルノーによる日産自動車の救済劇から23年。両社のアライアンスルールの見直し交渉が大きな山場を迎えている。

 協議の論点は主には二つ。一つ目は、ルノーの日産への出資比率を約43%から15%へ引き下げることで、両社の出資関係を対等なものに改定できるかどうか。二つ目は、電気自動車(EV)や自動運転など新領域において、両社が共同戦線を敷けるスキームを構築できるかということだ。

 ルノーは全社の事業を(1)EVとソフトウエア、(2)排ガスゼロ車、(3)金融サービス、(4)循環型ビジネス、(5)伝統的な内燃機関とエンジンの5部門に分割し、分社した新会社それぞれに外部資本を導入する構えだ。特に重要視しているのが(1)であり、日産に対してEV新会社への出資や技術供与を求めているようだ。

 いずれもセンシティブな論点であるだけに、協議は難航している。EVなど新領域のパテントに関する意見統一が図れず、2022年12上旬でのゴールという目標ラインを早々に取り下げた。これでルノーや日産の外国人幹部は冬季休暇に入ったため、結論は23年へ持ち越された格好だ。

 それでは、日産とルノーの出資交渉はどのような帰結をたどることになりそうなのか。

次ページでは、ルノーによる「日産搾取のカラクリ」を詳細な試算で解き明かすと共に、ルノーと対等の関係構築を目論む日産の「足りないピース」についても取り上げる。