斜めに首をかしげて尋ねてきた女性がいた。先ほどのエスカレーターの女性だ!戦慄が走った。どうしてこんな方がバッタの本を読み、あろうことかファンになってくださったのか?
オタクを名乗る彼女は、独自の観点で物事を捉え、それをありきたりの表現ではなく、自分自身の言葉で言語化してくれる。話は大盛り上がりで、次のデートも決まった。
マッチングアプリよ、すごいじゃないか!見直したぞ!期待以上じゃないか!
互いに結婚願望を抱いており、
「もっと早く出会えていたら、これまで無駄な婚活をしなくてもよかったのにね」
と、我々は初顔合わせの時点で結婚に向けてまっしぐらだった。
2回目のデートで、早くも結婚生活についての話題が出た。
具体的に結婚について考えてきたということで、彼女は携帯を差し出してきた。
「これ、コウタロさんの職場から、私の実家までのルートなの」
所要時間は約1時間半。帰省は楽勝だ。調べてきてくれてありがとうと伝えると、彼女は続けた。
「あのね、私、実家で暮らしたいの」
ん?結婚するのに実家で暮らしたいとは、これ如何に?
彼女によると、地元に友達がおり、両親とも仲良しのため、実家から離れたくないとのこと。とくにやりたい仕事もなく、実家にいたいから、旦那になる人には、毎日、実家から職場に通ってほしいという。「サザエさん」のマスオさんの立ち位置だ。
酔っていたこともあり、内容よりも、彼女が結婚について具体的に真剣に考えてくれているのが嬉しかった。
1日に3時間もの車通勤……
酔いが冷めると不安で胸一杯に
自宅への帰路、彼女との結婚生活を楽しく妄想していたが、酔いが冷めるにつれ、彼女の提案が我が人生にどのような影響を及ぼすのかが鮮明になってきた。
1日に3時間もの車通勤。それが一生続くとなると、その分でどれだけの研究や他の活動ができるのか。車通勤片道1時間くらいであれば、気分的に許容範囲だが、時間がゴッソリ持っていかれるのは恐怖だ。







