生き物相手の職業のため、イレギュラーな対応もある。なおさら職場から遠くに住むのは好ましくない。また、電車通勤ならまだしも、車の運転は気が休まらない。

 帰宅する頃には、酔いも彼女への想いもすっかり冷めていた。あれだけアツアツだったのに、我ながらなんていい加減なんだろう。

 すでに3回目のデートが計画されていたが、この先に進めないほうがよいだろうと判断した。

 大切なことは対面で伝えるのが礼儀だと思うが、お断りするために3回目のデートをするのも変だし、電話をすることにした。

『バッタ博士の異常な愛情 恋愛と婚活の失敗学』書影バッタ博士の異常な愛情 恋愛と婚活の失敗学』(前野ウルド浩太郎、光文社)

「色々と考えたのですが……」

 という常套句の後で、通勤に3時間かかるのは厳しすぎるため、結婚は難しい旨を彼女にお伝えした。

 結果、怒られた。

「本当に結婚する気ありますか?コウタロさんが普段はつくばに住んで、週末だけ私の実家に来てくれてもいいし、子供と私がつくばに遊びに行ってもいいし、色々やり方あるじゃないですか」

 彼女は私の悩みを解消する提案をしてくれたが、別れる決意を固めすぎており、何を言われても気持ちは揺らがなかった。平謝りしかできなかった。

 電話を切った後も、果たしてこれでよかったのだろうか、彼女の言う通り、色々とやり方があったのではなかろうかと、携帯電話を握りしめたまま身動きが取れなかった。