美容師は、私たちと「会話したい」と感じてくれるお客様の方が、「会話したくない」と思っているお客様よりもサービスに対する満足度が高く、リピートにつながりやすいと考えています。

 また、美容師と仲良くなり、複数回来店したお客様には「自分は常連である」という意識が芽生えやすく、よりお店に定着しやすいことも知っています。

 だからこそ、初めてのお客様に対しても積極的に話しかけ、「常連さん」になっていただけるようアプローチするのです。

 一方で、「会話したくない」というお客様にとっては、「美容室側の事情を押し付けられている」と感じる場面があるかもしれません。

 ですが冒頭の通り、お客様と多く会話することで、美容師側は「あの方は、このテイストが好きなんだな」といったように好みを把握しやすくなります。結果、次回以降の施術では、より質の高いスタイルをご提案できます。美容師と話すことは、決してデメリットばかりではありません。

 お客様側も、髪型に満足する体験を積み重ねるうちに、「この美容師になら任せられる」と信頼が高まっていくはずです。繰り返しになりますが、会話の裏側には、こうして信頼関係を深め、「一見さん」を「常連さん」へ変えていきたいという狙いがあるのです。

常連客を獲得している美容師が
「仕事ができる」と評価される

 ここからは、美容室と常連客の関係を、もう少し掘り下げて解説します。

 ご存じの方も多いと思いますが、全国のほとんどの美容室は「美容師の指名システム」を設けています。

 電話やインターネットなどで予約する際、お客様はお気に入りの美容師を指名できます。初めて行く美容室の場合や「誰でもいい」と思った場合は、「フリー(指名なし)」で来店することも可能です。

 その裏側で、実は「指名客」が多い美容師はお客様を呼び込んで安定した売り上げを作れるため、お店から高く評価されます。逆に「フリー」のお客様ばかり担当していても、次回に繋がらなければ評価は上がりません。

 この構図は、ホストクラブやキャバクラなどの“夜のお仕事”に似ているかもしれません。

 こうした業界特有の事情もあり、美容師は若手時代から自分の評価を高めようと、お客様に積極的に声を掛けるようになりますし、職場でもそのように指導されます。性格的に大人しかったり、自己主張するのが苦手だったりする美容師も、接客を重ねながらトークスキルを磨き、次第に社交性を身に着けていきます。