高級輸入車に乗り慣れた「超偉い方」を助手席に乗せて試乗

 今回の試乗は、不肖フェルの観察をさらに正確にする、あるいはせざるを得ない条件がもう一つ揃っている。恐れ多くも私のリーマン稼業の天上界におられ、メンター的な存在である「超偉い方」が助手席に座られたのである。

 仮にX氏としておこう。四半期に一回ほどのペースで「君は真面目にやっておるのか」と呼び出される。普段はドイツ製のセダンに運転手付きで乗っておられ、若い頃はMGBやトライアンフを駆って青春を謳歌されていたと聞く。乗り心地を「柔らかい」「硬い」などという簡単な言葉で片づけない世界の住人である。揺れが小さいか大きいかではなく、揺れの入り方、揺れの混ざり方、収束の速さ、止まり際の余韻といった“質”を身体で採点されている。

 行き先は永田町のザ・キャピトルホテル東急。青山のお屋敷に迎えに上がり、骨董通りを抜けて国道246号を回ってホテルへ向かうルートである。細い路地や片道3車線の太い道、緩やかなカーブもある。うまい具合に工事中の箇所もある。低中速域が中心だが、軽自動車の乗り心地を確かめるのには絶好のルートだろう。街の速度で、街の入力をどれだけ上質にいなせるか。またそれを、高級車に乗り慣れた方はどのように感じるのか。実に興味深い。

永田町にある、ザ・キャピトルホテル東急永田町にある、ザ・キャピトルホテル東急。今日はここの「ORIGAMI」でX氏とランチなのだ Photo:PIXTA

 豪奢なマンションの車寄せにルークスを入れる。ここに止めては困ります、と警備員が飛んでくる。X氏のお迎えに上がりました、と来意を告げると、「そうですか……」と怪訝な顔で引き上げていった。「なんでXさんのお迎えが軽なんだ?」と言わんばかりの表情だ。

 2分ほど待つと、X氏が玄関から出てきた。

X:久しぶりだな。真面目にやっておるのかね。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):ハイ。真面目に勤労しております。

X:冬なのにずいぶん灼けているな。真面目に勤労している者の顔には見えないが(笑)。

F:な、何をおっしゃいます。日々身を粉にして働いておりますのに(汗)。

X:それにしてもコンパクトなクルマだね。ヤマグチ君にしては珍しい。これも試乗なのかな。

 X氏は、本職界隈で私がフェルであることをご存じの数少ない方だ。