通常、こういう事態が起こると、専門職などは、やれアセスメント(評価と分析)だ、再発防止計画だと奮起する。それはそれで大事なことだが抱樸は少し違う。「だったら仕方ないね」と本人の現状をまず受け止める。「良い」か「悪い」かの判断が先行することはない。

 僕は、そんな抱樸のスタイルが好きだ。これは決して「諦念(あきらめ)」ではない。「受容」である。

 翌日、出張から戻ると山本さんが待っていた。「おお、山本さん」とハグする。「すみません」とご本人。「終わりよければすべて良しです。でも、次に『時々こうなったら』僕も連れてってくださいね」と言うと山本さんは涙ぐまれていた。

「だったらいなくならないでよ」と言いたいが、人は大なり小なり「時々なる」。そんなとき、「問題だ」「反省しろ」「改善しろ」と言う前に「ならば仕方ない」と一旦受け止める社会でありたい。

 山本さんは、何事もなかったように今もボランティアに励まれている。

お酒がやめられず
トラブル続きだった男性

 松波さん(仮名)と出会ったのは20年以上前になる。6年の野宿生活を脱し、「自立支援住宅」に入られた。

 半年後、地域に居を構えられた。ある企業の総務畑出身の方で新聞を端から端まで読むのが日課だった。物知りで何を質問しても答えてくれる。小柄で愛嬌のある方。皆からは「松ちゃん」と呼ばれていた。

 そんな松ちゃんにも1つの難点があった。しばしばお酒を飲み過ぎてトラブルを起こすのだ。

 自立された年の秋、「さあ、これから」というタイミングで松ちゃんは逮捕された。酔っぱらって駐車中の車を傷つけたという。

 その後、松ちゃんの裁判が始まった。抱樸は松ちゃんを支援するために「チーム松波」を結成した。検察官が読み上げた起訴内容を本人はすべて認めた。焦点は「どう更生するか」である。僕は身元引受人となり、証言台に立つことになった。当然、責任を持って松ちゃんを支援する、と表明した。

 裁判長が「奥田さん。この方の問題はなんだと思われますか」と尋ねられた。「お酒です。普段はとても穏やかで理性的な方です」。「では、本人が『お酒を飲まないという条件』でお引き受けいただけるということでよろしいですね」と裁判長。僕は少し考えこう答えた。

「そうではありません」。