75歳以上の実質可処分所得は「438万円」、日本の課題は経済格差よりも“所得水準が低い”ことPhoto:PIXTA

繰り返される「給付か減税か」
必要なのは所得を引き上げる政策

 参院選の大敗で、自民党では石破茂首相ら執行部の責任問題や総裁選前倒しをめぐって綱引きが展開され、野党の間では、自民党の動きを見ながら、与党との連携や野党間の共闘の主導権を取ろうとする動きが続いている。

 政権の枠組みがどうなるかはなお見えないにせよ、新政権の当面の経済政策課題は物価高対策だ。

 参院選では、与党が国民1人当たり2万円の現金給付を、野党の多くが消費税減税や所得減税を主張し、国政選挙のたびに繰り返されてきた「給付金か、減税か」の議論がまた行われた。

 だが、一時的な現金給付や減税をやっても、暮らし向きが根本的に良くなることはないだろう。

 現金給付や給付付き税額控除の実施などを支持する人には、それによって経済格差が是正されることを期待する声がある。確かに低所得層の人にはそうした支援が助けになるし、所得によって給付対象が絞られれば効果も大きい。

 だが本来、格差の是正では、税や社会保障による所得再分配政策があり、厚生労働省の所得再分配調査は、日本の所得再分配はそれなりに機能していることを示している。

 それでも多くの人が生活の苦しさを感じているのであれば、それは再分配が問題なのではなく、所得水準自体が低いからで、その引き上げが急務であるという成長の問題だ。

 もっと、成長することに意識を振り向けた方がよい。