2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』がついに刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
なんか隠してない? と思ってしまう違和感
以前、とある中小企業を見学させてもらったとき、ものすごい違和感をおぼえたことがある。
表現するのが難しいのだが、「違和感を消している」という違和感。
真面目そうな社員がはきはきと事業の説明をし、きれいに整えられた職場を見せる。
商談をするスペースは細かく区切られ、外部の音は一切聞こえないようになっている。
社外の人に、職場のごちゃごちゃは見せないようにしているといえばそれまでだが、それにしても、絵に描いたような職場。みんな真面目にデスクに向かっている。
なんか……
隠してない?
そういう違和感だった。
のちにこの会社は事業に失敗し、上層部が入れ替わって組織を再編することになったようだ。実はちょっとグレーなことにも手を出していた。
詳しいことはわからないけれど、当時の社員さんたちはどう感じていたのだろうかと、ときどき思い出してしまう。
違和感がまったくないのはあやしい
私が知っているふつうの職場は、髪を振り乱して書類の山に向かっている人がいれば、誰かに電話しながら声が大きくなっちゃっている人がいたり、給湯室でおしゃべりしている人がいたり……とそれぞれの人がそれぞれのことをしている。
「今日はこの人、疲れていそうだな」とか「今日はやけにイライラしているようだけど、何かあったのかな」とか、ちょっとした「違和感」があちこちにあるものだ。
「違和感がまったくない」というのは、逆に変なのである。
組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏も、『組織の違和感』(ダイヤモンド社)の中で「まったく違和感がない」というのもあやしいものだと指摘している。
裸の王様に「変だ」と言えるか
勅使川原氏は、決裁権を持つ役員に対し、いいことを言って自分たちのサービスを使わせようとするコンサルの例を挙げながら、こう述べる。
相手の立場につけ込み、裸の王様にしてやろうと思う人はごまんといます。でも、それに甘んじていれば、組織は良くなることはありません。
――『組織の違和感』p.258より
自分に都合のいい話は信じてしまう、ということはよくあるのだろう。
裸の王様になっている上層部に対し、「間違っている」と思っても、意見を言うことがご法度とされている組織文化であれば、言うことができない。
当初は違和感を持っていた社員も、見ないようにしたり、積極的に隠すようになったりしてしまう。
そうして、不正を行う会社も出てくる。
自動車大手、ダイハツ工業が34年にわたって試験結果の虚偽記載や試験データの改ざんなどの不正を行っていた事件で、第三者委員会は組織風土の問題を指摘している。
「自分で考えろ」と、問題が起きても現場で抱え込んでしまう状況があったのです。
また、不正が報道された中古車会社のように嘘をついてでも(靴下にゴルフボールを入れて車両をぶっ叩いてでも)顧客からふんだくることを「望ましい」とされれば、それをやるのが、悲しいかな人間です。
――『組織の違和感』p.258より
そうならないために、私たちはもっと「違和感」を大事にしなければならないのだ。
違和感を素直に言葉にして、「じゃあ、どうしようか?」と職場の課題にしていく。
本書には、違和感をヒントにして職場を良くする方法が書かれている。「違和感はまったくない」という人もぜひ読んでみてほしい。
(本稿は、『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念したオリジナル記事です)
小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太