「みんなが嫌がる仕事」を引き受けて
信頼を獲得していく

 しかし、残念ながら“お手軽に”出世できる、認められる方法はない。

 一方で“時間をかけて”ならば、ある。海原氏が友人である産業医が、大企業の上層部から信頼を得た例を話してくれた。

「その友人は大企業で管理職に認められ、すごくいいプロジェクトに取り組んでいるのです。『なぜそこまで信頼されるようになったの?』と私が尋ねると、友人は『みなが嫌がる仕事を引き受けました』と」

「あまり人がやりたがらなくて残ってしまうような仕事を引き受け、それぞれの部署から『助かる』と感謝される。それを続けていくと、次第に社内で評判が伝わり、やがて企業の管理職にも評価されるようになったようです。本人は『時間がかかったけどね』と言っていました」

 これを聞き、今では著名な料理人が「新米の頃、率先して油ものを扱った場所の掃除をした」と話していたことと同じだと思った。その料理人は、店に勤め始めた時に年下の職人から教わるという状況で、周囲から馬鹿にされ、いじめられたという。

 そこで早く仲間として認められるように、朝一番、皆が嫌がる場所の掃除に取り組んだというのだ。数カ月もすると、当初呼び捨てで自分を呼んでいた周囲の人間が「さん」づけしてくれるように。皆の信頼を勝ち得たのだ。

 だから時間をかけて人が嫌がる仕事に取り組めば、やがて信頼され、それが評価・出世に結びついていく可能性はあるだろう。

出世した人をうらやむ人が
知らない事実

 けれども周りを見渡すと、ぱっと出世した、世に認められた人もいるではないか。そういった人を見て、正直うらやましく感じることがある。

 私がそう告げると、海原氏は「それは、その人のほんの一面しか見ていないからです」と答える。

「心療内科医の立場である私は、著名な方、立場がある方の裏側を見てきています。何かに苦しんで体調が悪くなったり、大変なところをくぐり抜けてきていたり。この仕事をしていると、簡単に瞬間的にうまくいく人なんていないということを実感します。みなさんにお見せしたいくらい(笑)」