「そうですよね」と、海原氏はうなずく。

「医学の世界でも、ずっとその場で頑張っていた医師がいるのに、外部からやってきた医師が突然教授になる、しかもその頑張っていた人より教授のほうが年下なんていうことはしょっちゅうあります。だから出世できなくて頭にくる、嫌になって会社を辞めたくなるような心境はよくわかります」

 その上で、こうアドバイスする。

「けれども、出世以外に“自分の強み”を生かせる方法があるのではないでしょうか。医学であれば論文で評価されがちですが、手術のうまさや、人とのコミュニケーションに長(た)けている医師もいて、それも素晴らしいでしょう。逆に肩書は立派でも、手術は下手なんていう医師もたくさんいますしね(笑)」

「会社員の場合も、たとえ出世ができなくて、部下ができなくてもプレーヤーとしてのスキルがある人もいるのではないでしょうか。そこに目を向け、磨いていけば収入がアップし、他社から引き抜かれることもありますよね」

自分をしばっている呪縛に
気づくこと

 続けて、「ひとつの物差しから抜けられない人は、呪縛があるのではないか」と問いかける。

「例えば一般的に優秀とされる家庭環境で育ってきて、“これだけが素晴らしい”という価値観に囚(とら)われていると、出世や評価されないと焦ってしまうし、人を見て妬(ねた)む感情が生まれやすいでしょう。まずは自分をしばる呪縛に気づくことです」

 納得の言葉だった。

 実は会社員でなくフリーの私も、大学を中退してしまったという学歴のなさや、仕事に関わる受賞歴がなく、そこに目を向けると苦しくなる。人前で話したり、Xで発信するような行為も苦手だ。だからそういった自分にはないものをもっていたり、楽々こなしている人を目にすると、嫉妬の渦にのみ込まれそうになる。

 けれども、おそらく取材先(人脈)の広さが私の強みで、またそこから幅広い知識、切り口を得て、毎年着実に本を出してきたことを考えれば、誰に評価されなくても自分で自分を認められる。

 あなたの強み、あなただけのスキルも、きっとあるはずだ。