「身を粉にして働いたのに……」
時代に翻弄されるミドル・シニア
株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門で運営部長を務める下野雄介氏は、さまざまな企業に赴き、人事施策に取り組んできた。下野氏は、ミドル・シニア人材の多くが「会社に違和感を抱えている」と指摘する。
「現代のミドル・シニア世代の若手時代は『とにかく目の前の仕事を覚えてやり切れ』という、いわゆる“泥臭い働き方”が求められていました。そうして40代、50代になれば、年功序列のなかで相応のポジションに就けるという前提もあった。しかし、いつの間にか時代が変わり『あなたの市場価値は?』『あなたは外部に通用する仕事をしていますか?』と問われる時代に変わっていたのです」(下野氏)
自らのキャリアについて深掘りする研修に対して「肩たたき」と受け止めてしまう40代以上の社員は多い。しかし、会社側にその意図はなく「ミドル・シニア世代にもっと活躍してほしい」という思いから、研修を実施しているという。
「企業が求めているのは、年齢を問わず自身のキャリアと組織からの期待をすり合わせ、対話を通じて納得したうえで前向きに役割を果たそうとする社員です。我々は、こうした人材を『プロアクティブ人材』と呼び、企業が成果を上げるために欠かせない存在と捉えています。しかし、企業とミドル・シニア社員のコミュニケーションが圧倒的に不足しているため、会社からのメッセージが正確に伝わらず、双方にわだかまりが生じているのです」(同)
企業がキャリア研修を実施する場合、参加者には丁寧な説明を心がけ、お互い納得したうえで実施するのが望ましいという。
複数の要因からモチベーションが下がってしまったミドル・シニア人材。彼らには、もうひとつ共通点がある。
「当社が行った調査では、45~54歳のプロアクティブスコア(主体的に行動する力)は、ほかの年代に比べて低いという結果が出ています。なかでも、社外の人と関係を築く『外部ネットワーク探索行動』が弱いという結果が出ています」(同)
外部ネットワーク探索行動の弱さは、会社の外での交流を通して知見を広げる活動の乏しさを意味する。歳を重ねるほどに、新しい場所や人間関係、仕事に対しても消極的になる傾向があるとも理解できるのだ。
「たとえば、DX推進やAI活用など、社内にイノベーションを起こす部署に配属されても『自分の経験上、それは無理』と頭から否定し、チームの“ストッパー”になってしまうケースもあります。経営層は、ミドル・シニア層が起点となって、チーム全体を変える働きを期待していますが、本人たちは無意識のうちに『どうせ何も変わらない』と考え、ネガティブな方向に考えてしまうようです」(同)
若手時代から幾度となく経験した“報われなかった過去”も、彼らの諦観を強めているという。







