年末年始もごみ処理場は休まない
焼却炉は一度火がつくと、ごみを継ぎ足すことで燃え続ける。しかし、それを管理するには常に人が張り付き、クレーンを操作していなければならない。かつては24時間365日、人がこの作業を担っていた。
「年末年始はごみの回収をしないから休みだと思われますよね。でも、みんなここで年を越すんですよ」(若林さん)
今も施設には人がいる。しかし、クレーン操作の大部分は、AIが担えるようになった。それがこの、ごみ識別AI搭載自動クレーンシステム(通称:AIクレーン)だ。
巨大なAIクレーンを操作する様子。クレーンに付いているタイヤは、壁にぶつかったときに備えたクッション。人が操作すると壁にぶつけてしまうことがあるが、AIはその心配がないという Photo by M.S.
AIクレーンの強みは、熟練オペレーターの「眼」を再現した識別能力だ。どこに何のごみがあるかデータとして蓄積し、ごみの撹拌情報をもとに効率よく混ぜる。人が監視・操作する時間を最小限に抑え、運転時間の9割の自動化に成功した。
知られざるごみ処理の実態
なぜAIクレーンが必要になったのか。慢性的な人手不足、それでも質を落とさず果たし続けなければならない社会インフラとしての責任。ごみ処理施設がAIを求める背景には、私たちも決して他人事ではない、厳しい現実がある。
「汚いイメージもありますし、率先して働きたい人がなかなかいない」と若林さんは語る。ごみの回収が遅れると、怒って電話をかけてくる住民もいるという。「ごみを出せば必ず回収してもらえる国は、世界でも珍しいんですよ」(若林さん)
私たちの生活の根本は、ごみ処理施設に支えられている。焼却炉が長期間止まれば、病院や老人ホームにもごみがあふれ、感染症のリスクが高まる。実際、大きな震災が起きたとき、最優先で復旧させるインフラの一つがごみ処理施設だという。能登半島地震では、被災地の施設だけでは処理しきれないごみを全国の施設が受け入れることで、公衆衛生を維持している。
現場が抱えるリスクは人手不足だけではない。近年、急増しているのが、リチウム電池による発火事故だ。モバイルバッテリーなどに使われるリチウム電池を誰かが分別せずに捨てると、処理の過程で発火する恐れがある。「小さな発火も含めれば、珍しいことではない」と若林さん。
全国のごみ処理施設で火災が相次いでおり、その代償は数十億円に達する場合もある。この施設には熱感知カメラと自動放水システムが備わっていて、火災報知器が鳴る前に消火できるが、すべての施設がそうとは限らない。
生活に欠かせないサービスがいかにして成り立っているのか、筆者はここへ来るまであまりにも知らなかった。







