AIクレーンで運転時間の9割を自動化、人員は半分以下に

 荏原環境プラントがAIクレーンの開発に着手したのは2017年のことだ。

「人手不足や技術伝承の課題にどう対応すべきか考えていた中で、GoogleがAIを使った自動運転車に参入するという話があって。我々の領域だって、いつ異業種が入ってきてもおかしくない。先手を打って対応しようと」

 開発を担当した荏原環境プラントの町田隼也さんはそう振り返る。2019年には最初のシステムが完成した。

「人が減らされる」「仕事が大変になる」ネガティブな声が一変、ごみ処理場のAIクレーンが現場に受け入れられたワケ荏原環境プラント株式会社 事業・開発統括部 先進技術開発部 新技術開発課 課長 町田隼也さん。AIクレーン開発の中心人物。匠の技に追いつくべく開発を続けている Photo by M.S.

 技術的なポイントは、AIの役割を絞り込んだことだ。AIが眼となってごみを「識別」し、その情報をもとに別のプログラムが動作判断を行い、クレーンを動かす。役割を分けることで、現場での実用性を高めた。

「人が減らされる」「仕事が大変になる」ネガティブな声が一変、ごみ処理場のAIクレーンが現場に受け入れられたワケAIが多様なごみを識別し、色分けして表示する(荏原環境プラントのサイトより引用)

 AIクレーンの導入で、現場の働き方は大きく変わった。3600トンのごみの山のどこに何があるか、人には覚えきれないが、AIはすべて記録している。人なら交代のたびに申し送りが必要だが、AIは一貫してデータを蓄積し続けるため、24時間365日、同じ精度で働き続けられる。かつては1つの焼却炉の管理に4人必要だったが、1班2人体制で運営できるようになった。採用難だからこそ、少人数で運営できるようになった意義は大きい。

AIが超えられない「匠」の壁

 ただし、AIにも限界がある。AIは大量のデータからパターンを見つけ、平均的な最適解を出すのが得意だ。しかし、現場では想定外の事態が起きる。そのとき、経験にもとづいて柔軟に対応できるのが人間の匠だ。

「同じごみはなかなか来ない」と若林さんは言うが、ごみは多様性に満ちていて、季節や景気の浮き沈みを映し出す鏡でもある。熟練のオペレーターは、ごみを掴む微妙な力加減、状況に応じた判断によって、そうした変化に柔軟に対応してきた。長年の経験で培われた「匠の技」は、数値化しにくい。

「AIは、全てを平均に近づけていくイメージがあって。人は、そこから外れることができるから面白い。町田さんたち開発側は、人間が得意でAIが苦手な領域にも妥協せず挑戦してくる。開発者の意地ですかね。『そこは後でいいんじゃない?』って思うところもあるんですけどね」(若林さん)

 町田さんは、「若林さんに認めてもらえるまで頑張る」と笑った。熟練オペレーターの操作ログは、日々蓄積されている。いつか匠に認めてもらえる日を目指し、AIは今日も学び続けている。