『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第127話は、SNS上で広がる「受験論争」について考える。
SNSには良い部分もあるが…
国公立二次試験を目前に控え、龍山高校の先生たちは生徒にSNSとの向き合い方を示すプリントを配布しようとする。だが、東大合格請負人の桜木建二は「SNSはとっととやめろ」とだけ言い残し、プリントを捨てるのだった。
受験とSNSは切っても切り離せない話題だ。SNSでは有益な情報が得られることもある一方で、負の側面も大きい。
インスタグラムのリール動画やTikTokを見ていると、「学歴Tier(ティア)表」とでも言うべきものが流れてくることがある。Tierとはゲームの強さをランク付けしたものだ。それになぞらえて、出典不明の偏差値をもとに、「神受験生」「Aランク高校」などのあおり文句と共に、学校ランキングが示される。都道府県ごとや学部別などもあるから芸が細かい。
コメント欄では、決まって以下のような議論が繰り広げられている。「○○高校がSランクなのはおかしい」「△△大学と××大学が同じレベルなわけない」などなど。こういった「学歴論争」が不毛なのは言うまでもないが、受験生に無意識のうちに「序列」を埋め込んでしまう。
「GMARCH」や「日東駒専」といった用語もその原点と言うべきだろうか。実際の偏差値や特色よりも、強い学校群のイメージを形成している。
たんに頭文字を繋げるだけならまだしも、特定の都内の私立中高一貫男子校群をさして「種類物(取引における個性を持たないもの。転じて、個性がなく似たり寄ったりな学校)」と呼称されることがある。その学校の1つに通っていた身としては、決して気持ちの良い表現ではない。
学生たちを横に置き「受験界隈」だけで盛り上がる
『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
他にもSNSで頻出のテーマが「推薦」だ。東北大学が将来的に総合型選抜(かつてのAO入試)に全面移行すると発表したことが大きな話題を呼んだ。SNSでは「一般>推薦」という謎の風潮が見受けられる。
当然、ペーパーテストの利点や、総合型選抜が持つ経済格差に関する論点、生成AIの不正利用の可能性など、制度設計上の論点はしっかり議論されるべきだ。
だがそういった制度上の是非を抜きにして、あるいはこれらの論点を「誰もが知っている常識」として言及することなく、安易な推薦批判や「推薦受験生」批判に結びつけるのはいかがなものだろうか。実際にその入試制度を利用している受験生へのリスペクトはあるのだろうか。
「指定校推薦は一般よりも難しいか否か論争」もある。指定校推薦を利用した私の友人の中には、推薦を得た後にSNSで指定校推薦が揶揄(やゆ)されていることを知り、後ろめたい気分になったという。
受験の後も、これらの価値観は尾を引く。東京大学においてでさえ、「文三や理二に出願することは甘え」という価値観が一部に存在する。私も入学後に初めて知った。問題は大学内においてそういった価値観が流通していないのにもかかわらず、「受験界隈(かいわい)」でそのネタで盛り上がってしまっていることだ。
「SNSのそんな情報に惑わされるくらいなら、その進路希望は本物ではない」と思う人もいるだろう。確かに、一世一代の決断にもなりうる大学受験の学校選びを、SNSの価値観に委ねるのはよくない。だが、例えば中1から高3まで毎日のようにSNSを見ている人(決して少数ではないだろう)が、果たしてSNSの価値観に染まらずに判断ができるのかというと疑問符がつく。
次回、これらの現象に共通することと、その裏にあるより根深い問題について書いていこうと思う。
『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク







