その後、第2次世界大戦の勃発で軍事産業での雇用が増大し目的を達成したとして、1943年には解散している。わずか10年間で集中投資したのである。人類史上最速最大のインフラ投資だと思う。

 しかし、ニューディールはあくまでも需要創出政策であり、整備したインフラがいずれ老朽化し対策を必要とするだろうという認識は希薄だった。そのため50年経過した1980年代に集中して老朽化し相次いで崩壊する事態となった。当時『荒廃するアメリカ』(パット・チョート、スーザン・ウォルター著)という本が書かれ、インフラの崩壊が都市の荒廃を生むことが認識された。橋の崩壊、道路の陥没、水道管の破裂、公園の噴水や時計の停止、植栽の放置、信号機故障、コミュニティの公共施設の老朽化、地下鉄故障などが多発したとされる。

 このようにニューディール期の集中的なインフラ投資は確かに雇用創出という面では大きな効果を持ったが、寿命が有限であるインフラの供給力を持続させる必要があるという点はほとんど考慮されていなかったと言える。

図表1-4 米国のインフラ整備パターン同書より転載 拡大画像表示

荒廃するアメリカを守った独自財源を
みずから捨てた日本は八方塞がりか

『荒廃するアメリカ』が書かれた1980年代の米国大統領は共和党のロナルド・レーガンである。レーガンは減税、規制緩和などによるレーガノミクスを進めており、当時の冷戦による軍事支出の増加もあって財政赤字が急拡大するなか、インフラ投資財源の確保は困難を極めた。

 その中で、効果を持ったと言われているのがガソリン税の税率引き上げである。米国ではガソリン税は道路特定財源でありインフラ更新に優先的に用いることができる。政治の思惑から離れてインフラ老朽化に対処できる独自財源を持っていた効果は大きかったに違いない。もちろん、それで十分というわけではなく、その後も橋りょうの崩落事故などは発生しているが、もし独自財源の確保がなかったらさらに悲惨な事態に陥っていたと考えられる。

 さて、日本のパターンはどう位置づけられるだろうか。インフラ投資が特定の時期に集中し老朽化が集中しているという点から、まず、投資平準化パターンではないと言える。また、負債依存度は高度成長期に比べて近年飛躍的に高まっていることから、負債減少パターンでもない。唯一参考になるのは1980年代の米国であり、ガソリン税率引き上げという道しかないことになるが、現在、日本では道路特定財源を一般財源化しており独自の財源は存在しない。八方ふさがりの状態にある。