「税収は過去最高、防衛増税なんて必要ない」は本当か?経済学者がキッパリ指摘写真はイメージです Photo:PIXTA

ウクライナ侵攻やパレスチナ情勢、北朝鮮のミサイル発射など、国際情勢の緊迫度は増すばかり。日本の防衛費は2023~27年度の5年間で計43兆円に増額することになったが、その財源は歳出改革や余剰金など、不確定要素のある税外収入に頼るところが大きい。日本の抑止力を強化するために不可欠な“持続可能な財政”について、増税の決断も含めて本気で向き合う時がきている。本稿は、佐藤主光『日本の財政―破綻回避への5つの提言』(中公新書)の一部を抜粋・編集したものです。

中国・ロシア・北朝鮮に囲まれた
日本の厳しすぎる安全保障環境

 コロナ後の新たな危機が安全保障だ。2022年2月に始まったロシアのウクライナへの全面侵攻や、2023年10月から多数の死傷者を出しているパレスチナ情勢など、今、国際情勢の緊迫度が増している。そして、日本を取り巻く東アジアの安全保障環境も戦後最も厳しい中にある。北朝鮮はミサイル発射を続け、そして中国が軍事力を大きく強化し、台湾有事が目下の懸念となっている。

 そこで日本政府は、新たな「防衛三文書」(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を定めた。防衛三文書では、これまでの「敵基地への攻撃手段を保持しない」としてきた政府方針を転換し、相手国のミサイル発射拠点等を叩く必要最小限の自衛措置として、「反撃能力」の保有を打ち出し、相手の射程圏外から攻撃できるスタンド・オフ防衛能力を高めるという。

 経済学では、国民全体が受益する一方、市場経済の中で自主的に提供することが困難な財貨を「公共財」という。国家の防衛は典型的な公共財であり、その確保は国の責務となる。ただし、そのためにはやはり財源が必要だ。

 防衛費は2023~27年度の今後5年間で、合計43兆円に増額する。そして、巡航ミサイル「トマホーク」を含む防衛装備品、及びその部品・弾薬などを調達し、戦闘継続能力を強化する。その一環として、2023年度当初予算の防衛費は約6兆8000億円と、前年度に比べて約1兆4000億円の増加となった。そして27年度までには、国内総生産(GDP)比の防衛費を、現行の1%台から2%(11兆円規模)に引き上げる。そのため、27年度以降、1年あたり約3兆6000億円の財源が新たに必要とされる。

税金以外の収入を積み立てる
「防衛力強化資金」を創設

 政府はこの増額分を裏付けるため、2023年2月3日に防衛財源確保法を閣議決定した。その中に、税金以外の収入を積み立てて複数年度かけて使う防衛力強化資金が創設されている。2023年度の同資金への積立は、前述の防衛費とは別に3兆3806億円余りに上る。

 財源としては、外国為替資金特別会計からの繰り入れ、医療機関への支援等コロナ対策の不用分、商業施設「大手町プレイス」の売却収入等が充てられている。