燃料電池車から軽自動車へ

F:チーフエンジニアの坂さんに伺います。ルークスご担当の前は何をやっておられたのですか?

坂:軽を担当する前は、いわゆる「先行開発」をやっていました。あまり詳しくは言えないのですが、ちょっと怪しい仕事を(笑)。怪しいと言っても、もちろんイリーガルなことではありませんが。入社した時に配属されたのは車体設計です。特にプラットフォームの設計をやっていて。そのあと2000年に燃料電池車へ。2000年当時はFCV(注:Fuel Cell Vehicle、燃料電池自動車)が世界中でブームでしたので。

F:FCVですか。トヨタもホンダもやっていましたよね。

坂:日本ではそうですし、アメリカではビッグ3もやったし、欧州ではフォルクスワーゲンやダイムラーなど、みんなやっていた。もちろん研究は90年代から始まっていましたが、各社が市販に向けて本格的に動き出したのは2000年前後です。当時は電気自動車で使うリチウムイオンバッテリーの性能がイマイチで、「やっぱりFCVじゃない?」という雰囲気が強かったんです。

F:FCVとはまた難儀なお仕事を……。水素のタンクがバカみたいに頑丈なんですよね。頑丈だから重い。

坂:約700気圧(70MPa)という高い圧力をかけますから……アルミのライナーに、樹脂ライナーにカーボンファイバーをぐるぐる巻きにして。拳銃で撃っても穴が開かないようにして、崖から落っこちてクルマがペシャンコになっても、水素タンクだけは無事に残るような超オーバースペックな規格です(苦笑)。

F:でもまあそうしないとダメですよね。爆発するとヒンデンブルク号(注:1937年にアメリカで爆発・炎上した、ドイツの巨大飛行船LZ129 Hindenburgのこと)みたいなことになるし。

坂:みなさんそれを言うんですよ。水素と言うとあの映像をイメージして、大爆発する。危ないと言う。巨大な飛行船を浮かせるボリュームを密閉して、そこに火を飛ばせば、そりゃ爆発しますわな、という話です。でも水素は世の中にあるすべての気体の中で最も軽いんです。当然拡散も早い。そんなに簡単に大爆発するものじゃありません。でも世間はそう思わないから、「安全です」と言うからにはいろんな基準を整備しながら開発しなければならないんです。