自動車会社の技術者なら、チーフエンジニアは憧れの仕事

F:それにしても、時代の最先端を走るFCVをやっていたエンジニアが軽自動車に……。

 失礼なことを伺いますが、軽にアサインされたときにちょっと抵抗はありませんでしたか。「FCVをやっていた俺が軽かよ」という気持ちはありませんでしたか。

坂:それはないですよ。やっぱり1つのクルマをまるっと任されるCVE(チーフビークルエンジニア)という立場は、エンジニアとして最高に嬉しいですよ。自動車会社で働く技術者であれば、誰もが一度はやってみたいと思う仕事ですからね。ましてやこれだけの規模の会社です。エンジニアは大勢いる。最後までCVEを経験出来ない人がほとんどです。そこで「CVEをやってみないか?」と声がかかるのは、やはり最高に名誉な事ですよ。サクラの最後の方も担当はしましたが、企画段階からCVEを務めるのはこのクルマが初めてです。

F:「やってみないか?」と声がかるものなのですか。「お前やれ」というイキナリの辞令ではなく、まずは打診があるんだ。

坂:それは、上司とその人との関係性だと思います。私の場合は上司から事前に打診がありました。

F:拒否権もアリ?

坂:もちろんあります。でもCVEの打診を受けて、イヤだという人はまずいないと思います。誰もがやりたい仕事ですから。

研究・先行開発・製品開発、3つのフェーズ

F:先ほど「先行開発」とおっしゃいましたが、先行開発とは何ですか?

坂:自動車の開発には、「研究」、「先行開発」、「製品開発」という、大きく分けて3つのフェーズがあります。「研究」は、10年先、20年先のことを考えた、いわゆる要素開発をすることです。全く新しい技術。日産の中では「ゲームチェンジャー」と呼んだりします。

F:せっかく研究したのに、10年後、20年後にまったく使われないこともある。

坂:ああもう、そんなのはゴロゴロあります。宝くじとは言いませんが、当たればラッキーという世界です。で、その先に「先行開発」がある。この先3年後、4年後ぐらいのフェーズで、製品開発側で採用しようとしている技術開発。私はそれをやっていました。で、市販ベースに落とし込む製品開発、と。