このケースのポイントは、「職種限定の合意」があったかどうかです。職場の就業規則に「会社は、業務の必要に応じて配属部署を異動し、あるいは職種および職務の変更、転勤を命じることがある」と明記され、個別の労働条件通知書にも職種限定の記載がない場合は、異動命令は有効と判断されやすいでしょう。

 長年同じ部署にいたという事実だけでは、職種限定合意が成立したとはいえません。業務上の必要性があり、著しい不利益や不当な動機がない限り、受け入れる義務が生じる可能性が高いのです。

仕事と家庭の両立で転職したのに…!
介護施設に勤務、30代看護師のケース

 都内の介護施設に勤務する看護師の木下さん(30代・女性)。が大学病院から転職した理由は、「子どもとの時間を大切にしたい」という思いからでした。ところが、人手が足りないという理由で、通勤1時間の別施設への異動を命じられました。従わなければならないのでしょうか。

「夜勤なし、異動なし。それが条件でしたよね?」

 木下さんは上司である施設長に冷静に問いかけました。今の施設は保育園まで徒歩5分で、通勤は20分圏内です。親の支援を受けられない木下さんにとって、仕事と育児と家事を両立させるために決断した転職であり、職場の立地は生活設計の前提でした。

 しかし、施設長は「横浜の施設で急に看護師が辞めてしまった。ここはまだ人数がいる。何とか助けてほしい」とすがってきます。

「でも、私は異動がないと聞いたから入職したのですよ」と木下さんも訴えます。

「通勤1時間なら他の職員も通っているし、決して通えない距離ではない。業務上やむを得ない。何とか頼むよ」と施設長もあきらめません。

 このケース、木下さんは異動しなければならないのでしょうか?