我が子を落ちこぼれにしたくないという両親たちの気持ちも理解できる。だがこうして我々日本人は、子どもの頃から、自由時間が少ない生活に慣れさせられている。小学生時代からこのような生活をしていれば、成人してからも、自由時間を渇望する人間にはならないだろう。せっかく欧州に住んでいるのに、もったいないことだ。

 あるドイツ人は、「東京の駅で、午後9時頃に塾や予備校から帰宅する沢山の子どもたちを見て、びっくりした」と語っていた。ドイツでは、このような光景は考えられない。

 この国では勉学だけでなく、子どもが家族と一緒に過ごす時間や、友だちと遊ぶ時間も重視しているからである。

長期バカンスを楽しむ精神は
幼少期から培われたもの

 日本人にとって、驚異的な事実がある。ドイツの多くの州政府は、夏休みや冬休みに学校が子どもたちに宿題を出すことを禁止しているのだ。

 その理由は、ドイツの夏休みや冬休みの目的が、子どもが学校での勉強の疲れを癒し、家族や友だちとの時間を楽しむことにあるからだ。

 たとえばバイエルン州教育省の規則によると、夏休みなどの長期休暇だけではなく、祝日と日曜日向けの宿題を出すことも禁止されている。つまりドイツでは、基本的に宿題とは、授業がある月曜日から金曜日だけに出すべきものとされているのだ。

 夏休みに宿題がどっさり出る日本とは、大変な違いである。私は日本で小学生だった頃、夏休みに水泳の授業のために学校に行ったり、クラブ活動に参加させられたりしたことがある。

 ドイツでは夏休み中の子どもに沢山の宿題を出したり、学校でのスポーツ活動に強制的に参加させたりすることは、考えられない。もしもそんなことをしたら、親が抗議するだろう。

 つまりドイツ人たちは子どもの頃から、勉学にいそしむ時間と余暇をきちんと区別し、余暇には自由時間を楽しむことが当たり前になっている。学校側も、子どもが自由時間を楽しめるように配慮している。

 こうした余暇を楽しむ習慣が、大人になって就職してからも、続いているわけだ。